小論文-傾向と対策 | 私立医学部・歯学部予備校のメルリックス学院

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小論文-傾向と対策

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小論文-傾向と対策

岩手医科大学

●読解力と解釈力が求められる

●資料文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 広井良則『持続可能な医療』を読み、「病気と環境」について考えを述べる。 600字 50分
18 一般 石川九揚講演録 『縦に書け、縦に考えよ―縦と横の文化学―』より 「縦」と「横」のイメージに関する考えを自由に述べる。 600字 50分
17 一般 平山郁夫『生かされて、生きる』より あなた自身の「自分の型」について述べる。 600字 50分

●傾向
岩手医大の資料文は、’17以外は短めであるため、読解力が求められる。岩手医大は’14に、「国民皆保険制度」を出題し、以後他校では頻出テーマとなっている。’19にも近畿大学で出題されており、私大医学部では医学・医療に関する出題が増えている。しかし’15から’18まで、日大と共に独自路線を歩んできたが、’19は題名も「持続可能な医療」、設問も資料文から「病気と環境」について述べるよう指示された。
’18は日本画家の平山郁夫の文章。美術学校では「自由に描け」と言われ、失敗を重ねながら体で技術を覚え、先人から学ぶ姿勢により、徐々に自分の型を作り上げていく話。 岩手医大にしてはわかりやすい文章なので、丁寧に読解し謙虚に省察する。’17と’15では、文系学部も含めて頻出の「わかる」ということについて述べる。 ’17の著者は数学に関する著作があり、当時日経新聞にエッセーを連載中だった。文中では世界的数学者の岡潔について触れ、「他者との共感性」と、幻肢患者への実験について述べている。現代文では「麻酔で皮膚感覚を遮断すると、幻肢患者でなくても、他人の身体的痛みを共感できる」という部分があるのだが、ここでは略されているので理解しにくい文章になっている。そこで資料文の「共感」をいかして、他者の痛みをわかることについて述べる。
岩手医大では、今まで資料文や設問に「いのち」という平仮名表記がよく出たので留意する。論述対策としては、日大の’14~’19の設問の前半を使って300字程度でまとめ、説明する力をつける。また、他者への共感性の理解には、自治医大(’19、’18の反論せよは除く)、最近の聖マリアンナ医大、’17の福岡大、’16の兵庫医大などの資料文を読んでみよう。’19は再び医療に関する課題になっているので、国民皆保険制度について触れた文章の年度以前の過去問をみておくとよい。医療の現状、社会の中の医療についてニュースなどを見て、地域包括ケアシステムや看取りの医療なども理解しておく。

東北医科薬科大学

●医学・医療、医師としての意識が求められる

●テーマ型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 義務と権利の関係性について述べる。 600字 60分
18 一般 犯罪被害者、加害者の人権保護について 600字 60分
17 一般 医療技術の進歩により人は幸福になったか。恩恵と問題をあげて述べよ。 600字 60分

●傾向
医学部創設の’16から、小論文が課されるようになった。テーマ型のため、設問要求に即した構想を練る練習と、知識や情報をつけるという2つの方向から力をつけていく。後者は他大学の小論文や面接対策にもなる。19の「義務と権利」を書くにはインフォームドコンセントが便利である。患者にも義務はあるが、医師には病状、処置、病名、複数の治療法、予後、検査の目的と方法、薬の作用と副作用などの医療情報を説明する義務があること、また、治療をしなかったらどうなるかも説明すべきである点を押さえる。アメリカでは法的に医師の説明義務となっているが、日本は医療法の中に入っているので、インフォームドコンセントにおける医師の義務が曖昧である。また、日本では「説明と同意」と訳され、医師の分かりやすい説明や信頼関係の構築が中心になっているが、本来は患者の知る権利や自己決定権を尊重し、納得の上の治療法の選択を支えるべきである。1973年の全米医療協会の「患者の権利章典」も参考になる。’18は、加害者の人権にも配慮される現代において、被害者の人権、プライバシーをメディアがどう守るか、またメディアからどう守るか、そもそもなぜ両者の人権を守るべきなのか、よく論じられているテーマである。また、医療の現場においては、患者の人格・人権を守る意識が求められる。医療過誤にも通じる問題でもある。3~4段落構成の構想メモを作成してから論述するようにしたい。
’17は、「医療技術の進歩における恩恵と問題」が問われた。これは「科学技術の進歩の光と影」の類題で頻出テーマである。構想時には、恩恵と問題を具体的に複数あげてみて、説明しやすい例を使う。北里大や金沢医大の過去問はヒントになる。
4年間テーマ型だが、資料文型から知識を得ておくのもよい。医学・医療なら、例年北里大、聖マリアンナ医大、金沢医大、川崎医大(’19は研修医と模擬患者の医療面接だからインフォームドコンセントを考る足掛かりになる)、北里大、聖マリアンナ医大、テーマ型は昭和大、近畿大、関西医大。また、’19の金沢医大や日大(著者の福岡伸一は「生物と無生物の間」が著名)、兵庫医大(本川達也は「ゾウとネズミの時間」「歌う生物学」が著名)は生物や神経に関する資料文だから、視野を広げるのに都合が良い。メルリックス配布の『医系小論文・面接用語集』で知識・情報を押さえておこう。

自治医科大学

●医学・医療に対する真摯で冷静な姿勢が求められる

●資料文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 出題文1 外山滋比古『本物のおとな論 人生を豊かにする作法』より、言葉のアイマイさに関する著者の意見を50字程度で要約し、
医療についてことばのアイマイさは必要か否か、考えを述べる。
出題文2 藤原正彦『菅県妄語 始末に困る人』より 著者の意見を要約したうえで、反論する。
400~500字×2 90分
18 一般 出題文1 曽野綾子『人生の収穫』より、主張をまとめ、賛成か反対で論じる。
出題文2 杉浦俊之『死ねない老人』より、出題文の趣旨(延命のみの治療は止めた方がいいだろう)に対して反論を展開する。
400~500字×2 90分
17 一般 出題文1 寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第四巻 小宮豊隆編』より、内容をまとめ、賛否を書き、
「科学論文」以外の文章についての考えを書く。
出題文2 松尾豊『人工知能は人間を超えるか~ディープラーニングの先にあるもの~』より、
人工知能の発達による医師の役割の変化の有無について考えを述べる。
400~500字×2 90分

●傾向
例年、大問が2題、各400字~500字。資料文はA4で2~3枚程度が多い。2問セットで時間内に書く練習をしておく。’16までは、手紙や日記を書けという指示もあったが、この3年は医療には触れていない文章に対し、設問では医療に結び付ける、あるいは反論を求める傾向にある。
’19の外山、藤原も私大医学部では頻出。藤原は被災地への復興支援のため、今年も変わらず咲いてくれた桜の花見もし消費もしようといっているだけなのだが、読解力不足で感情的反発に過ぎない答案が多い。ユーモア(とはやせ我慢)と言っている。反論するなら英国とは他者を悼む際の国民性が違うということで。’18の曽野は、福岡大、北里大等でも既出。医学雑誌の医師アンケートでは関心度ベスト3になったこともある。2年前、在宅介護で夫を看取り『夫の後始末』を出版。夫のへそくりを元に、死後4か月目に子猫を買う。「思い出は過去に向く」が、650グラムの直助は、「残された家族がしっかり立って前に歩く任務」を助けてくれているとあった。さて資料文は、高齢の教皇が久しぶりの故郷で父母の墓参する際、人々が押し寄せ子供たちは歌う。「なぜ無言の輝くような沈黙の中にしみ透る親子の会話を奪うのか」という内容。演習では、前年の福岡大の文章よりも共感度は高く、賛成が多かった。[設問2]は尊厳死法が望まれる現在、延命治療に反対の著者への反論という設定。’17の寺田寅彦(物理学者・随筆家。夏目漱石の弟子)も、頻出。[設問2]は、AIやロボットと医師が共存する立
場の方が書きやすい。このところ、短い要約を課しており、全体が400~500字だから100字程度でまとめる。’19の50字以内という指示には、長めのタイトルだと思えば北里大等の問1対策も兼ねた練習になる。

獨協医科大学

●要約と意見をまとめる力が求められる
●資料文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般・セ試利用 (1日目) 小松公夫 「学力が高いだけで医者になってはいけない」より
問1.要約。問2.本文内容について考えを述べる。
200字/600字 90分
一般・セ試利用 (2日目) 『世界』 2018年8月号より 渡邉琢 「言葉を失うときーー相模原障碍者殺人事件から二年目に考えることーー」
問1.要約。問2.本文内容について考えを述べる。
18 一般・セ試利用 (1日目) 中山あゆみ”難手術に挑む「匠の手」ー上山博康”』より、
問1.要約。問2.本文の内容について考えを述べる。
200字/600字 90分
一般・セ試利用 (2日目) アーサー・D・リトルパートナ― 森洋之”組織のあり方 全員が対等なリーダー”
問1.要約。問2.本文の内容について考えを述べる。
17 一般・セ試利用 (1日目) 伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』より、
問1.要約。問2.本文の内容について考えを述べる。
200字/600字 90分
一般・セ試利用 (2日目) 中西啓 『統計学が最強の学問であるーーデータ社会を生き抜くための武器と教養』
問1.要約。問2.本文の内容について考えを述べる。

●傾向
例年、2日間とも資料文の長さや問の形式は同じである。問1は200字要約、問2はシンプルに「本文の内容について」600字以内で考えを述べよというもの。資料文は私立医学部では長いA4 2~3枚だが要約は200字と短いので端的にまとめる練習は必要。その際は①文章全体の構造・構成をつかむ。 ②繰り返しや筆者の主張を絞る。 ③筆者の言いたいことをかみ砕いて理解する。③この作業の上、30分程度で書くようにする。これらは問2の構想を練るステップとなる。’16,’18とリーダー、リーダーシップが続いたが、’19の2日目は「やまゆり園」の事件で、国立大学では既出。ニュース性は薄れているが横浜市の広報ではいまだ大きく扱っている。非常に難しい問題である。1日目は法律の専門家である著者が犬は器物として扱われることを話したところ、それを疑問に思った小学生から文集が届き、医師を目指す子供たちには正義の心、公共心を忘れないでほしいと結んでいる。最近、引退した競走馬数頭が、たてがみを切られる事件があった。動物虐待もしかりで殺しても器物損壊にしかならず獣医たちは法改正を求めている。法律と子供たちの正義の声、皆さんはどう考えるだろうか。
’18の1日目は、若き日の私が手術に反対し、退院させた子は5年ほどで死んでしまったと親から手紙が届く。13年後の恩師の言葉から、自分は長い時間をかけて外科教育をしてもらったことにやっと気づく話。題名にも着目。2日目は「サーバントリーダー」。’16と併せて読んでおくとチーム医療、多職種連携に応用できる。’17の2日目は、冒頭の1文目と題名がほぼ同じ点に着目し、「統計学の最強さ」について読み取る。1.コレラという感染症封じに疫学研究、統計学が役立ったことを中心に、2.賢い人たちへの批判を少々、3.統計学が現代の健康政策にも役立っている、という3点をまとめる。感染症、疫学、公衆衛生など、最近の注目語が出るので’15の医療保険制度と合わせて読んでおく。

埼玉医科大学

●複数の資料文と小問に対する時間内処理能力が求められる
●現代文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 前期 長めの文章。大問4問あり、小問計22問(すべて選択肢)。
1. サン・テグチュペリ 渋谷豊訳『人間の大地』
2. 佐藤俊樹『社会は情報化の夢を見る--〔新世紀版〕』--ノイマンの夢・近代の欲望
3. 宮本茂頼『「火垂るの墓」自己責任論 高畑薫は預言者だった?』
4. ピエール・ベイヤー 大浦康訳『読んでいない本について堂々と語る法』
60分
センター利用(前期) 1. 支援する人の立場について(5分程度の音声)問1.要約。問2.「耐え難い誘惑」と何か。
2. 校長としてあなたが先生を1人雇用する場合の条件を5つ挙げ、特に大事なもの3つの理由を書く。
1.200字/600字
2.800字
45分
18 一般 前期 長めの文章(章図表を含む)。大問4問あり、小問計26問(すべて選択肢)。
1.「ソロモンの歌・一本の木」吉田秀和
2.「粘菌 その驚くべき知性」中垣俊之
3.「翻訳教育」野崎歓
4.『創造的福祉社会「成長後の社会構想と人間・地域・価値」』-60分
60分
17 一般 前期 長めの文章(章図表を含む)。大問4問あり、小問計26問(すべて選択肢)。
1.エブリン・フォックス・ケラー 石館三枝子・康平訳『動く遺伝子ートウモロコシとノーベル賞』
2.杉原厚吉『理科系のための英文作法-文章をなめらかにつなぐ四つの法則』
3.村越真『人はなぜ道に迷うのか?方向音痴のための地図の読み方』
4、鯨岡峻『ひとがひとをわかるということー間主観性と相互主体性』
60分

●傾向
現代文型の大問は例年4問。全問選択肢だが、各大問とも資料文が長く(A4で3ページ前後)、小問合計数も多いので、現代文を解く時より、感覚的に急がないと間に合わない。読みにくい文章や図表がある場合もある。’19前期は大問3が珍しく1ページ、ほっとしたのもつかの間、大問4は4ぺージあるので、初めに全問をざっと見て時間配分を考える。まず、2年分解いてみること。平均的には大問1問10分~20分を目安にする。その後、もう少し埼玉対策に時間が取れれば、自分の得意、不得意どちらかを重点的に強化しておくとよい。マーク式だが、素早く読んで、素早く解答していく。
’19のセンター利用も大問2問だが、文字数指定となった。時間が足りないと思われるので、1の対策は例えば聖マリアンナ医大を読み上げてもらって要約し、問3を600字で書く。また2対策はテーマ型を使って迷わず書き進む練習をする。’18のセンター利用の小論文は、かなりユニークであった。B4用紙に自由に記述するものと、文字指定の小問が2問である。[設問2]の方は5分ほど音声を聞き取り、問題に答える。かつて、関西医大の推薦入試でこの形式が使われたことがある。資料文型よりもさらに、勘違いや間違った解釈をする可能性が高い。医療の現場では情報共有力と、患者理解のいずれも聞く力は大切である。日ごろの力で十分こなせる課題である。

国際医療福祉大学

●設問中の条件とヒントを生かす力が求められる
●テーマ型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 外国人労働者の受け入れに、改正出入国管理法の施行の背景には人口減少と労働力の確保がある。
新設される「特定技能」により、介護、医療福祉分野へも外国人労働者の増加が見込まれる。それらの社会も含む影響について。
600字 60分
18 一般 日本の2016度の出生数が1899以来初めて100万を下回る。少子化の背景は親世代の減少、晩婚化、夫婦の出生数の減少以外の他、
多様化し、子ども・子育て支援等の課題もある。少子化の問題点を整理したうえで、対策案を述べる。
600字 60分
17 一般 英国のEU離脱、トランプ氏のTPP見直しなど、自由貿易と保護貿易に対する考え方が議論されている。
第二次世界大戦とのIMF、GATT体制の転機かもしれない。自国の立場で自由貿易と保護貿易について論じる。
600字 60分

●傾向
’17に医学部が新設された時から、’19までの3年間、200字を超える長いテーマ型である。昭和大と同様、前半には前提でありヒントとなる内容が示され、後半が設問となっている。そのため、「少子高齢化と医療について」という短いテーマ型とは異なり、構想の道はついている。’19は、外国人労働者がテーマになっているが、根本には18の少子化問題、グローバル化問題でもでもある。オリンピックも近いので、海外からの輸入感染症と医療、バイオテロも含むテロと医療などを調べておこう。また、世界的にも災害は多いので災害援助活動、大阪での会議やダボス会議での、海のマイクロプラスチック汚染、温暖化など環境問題と人とのかかわり、WHOの動向なども重要である。
’19のテーマは一般的には、今後介護・医療に携わる外国人労働者やその他の労働者の増加が背景にある。ただ、国際医療福祉大学の医学部では学年によっては英語で授業をするなど他大学の教育とは異なっている。また在学中に途上国での海外研修も選択できるので、医療資源が乏しい中での災害医療も学べるし、将来、途上国で腰を据えた医療貢献のできる教育となっている。そこで外国人患者への医療だけではなく双方向から考えておくと、志望理由書作成や面接にも役立つ。そのために、大学のパンフレットやホームページ、シラバスを十分に理解しておくこと。また、18の少子化は労働力や高齢化問題とも関連するので、他学部においても頻出テーマである。私大医学部では近年、「社会と医療」の出題が増加している中で、前年よりもオーソドックスになったといえる。
’17は、自由貿易と保護貿易について意見を求めるもの。設問中のTPPなどの略語には日本語の名称が添えられ、他にもヒントが示されているので、注意深く読んで 設問中の語句を使いながら論述する。またこの年の面接では、「文化」について聞かれた者もいるので、引き続き大学設立の目的、使命、将来の展望などを確認しておきたい。
小論文は、知識吸収と併願校対策を兼ねて、本ガイドブックの大学別対策を参考にして、資料文型も書いてみよう。テーマ型の練習には、過去問だけではなく昭和大や、近畿大も使い、書いたものは先生に添削をお願いすること。

杏林大学

●自己を取り巻く社会生活への関心が問われる
●資料文型
●テーマ型
●図表型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 「人を評価する」ことについて論じる。 800字 60分
セ試利用(1日目) 「流行を追う」ということについて論じる。
セ試利用 (2日目) 「信念を貫く」ということについて論じる。
18 一般 「さわらぬ神に祟りなし」ということわざについて論じる。 800字 60分
セ試利用 (1日目) 「普通に生きる」ということについて論じる。
セ試利用 (2日目) 「伝統を守る」ということについて論じる。
17 一般 「人生、思い通りにいかない」ということについて論じる。 800字 60分
セ試利用 (1日目) 「教育」の意義について論じる。
セ試利用 (2日目) 「働くこと」の意義について論じる。

●傾向
この数年はテーマ型である。それまでの数年間と違い、小論文に対する負担感は減ったと思われる。かつての、第1次テーマ型時代は「生活習慣病」が出題された。丁度その頃「成人病」から名前が変わり、多少知識が必要だった。次は受験年度の新聞記事から科学・医学、若者や高齢者に関する話題が資料文型、図表型として出題されていた。そして今回の第2次テーマ型に至る。
’19の「人を評価する」は結構考えさせらる。受験生からすると、面接や小論文は他科目に比べ評価基準がよくわからない。そのよくわからない科目で「人を評価する」を論述させられる二律背反・・にどう挑むのか。’18の「さわらぬ神に祟りなし」。近年の医学部では珍しいテーマなだけに、裏があるのではないかと不安だったという受験生がいた。このような変化球型の小論文には、愛知医大があるので、さかのぼって調べて参考にするとよい。「普通に生きる」の普通とは何だろうか。将来、進む分野によっては、重症者、難病患者、災害の被災者など、平凡な日常を一気に奪われる患者や家族たちを相手にするかもしれない。普通に生きるもなかなか難しいテーマなので、慎重に考えること。
’17の「人生、思い通りにいかない」。同年、資料文型の福岡大では『人生はうまくいかないから面白い』というタイトルの文章が出ていたのでこちらも読んで参考にする。
災害医療や緩和ケア以外もこの2年位の大きなニュースや話題ををチェックしておく。本ガイドブックの解説を参考にして、資料文型から、医療、高齢化、AIなど最近の話題に加え、変化球型のテーマには、各分野の人物を取り上げた記事もよい材料になる。それらも含め個々の効率的な練習法は小論文の先生に相談しよう。また、メルリックス配布の『医系小論文・面接用語集』に目を通しておくとよい。

慶應義塾大学

●課題に対して簡潔にまとめる力が求められる
●テーマ型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 児童虐待について思うことと、なくすためにはどうしたらよいかについて考えを述べる。 600字 50分
18 一般 1.末期がんの患者が、インターネット注文した「がんによく効く湧き水」だけを摂っている。
その患者の担当になった研修医としてあなたはどんな言葉をかけるか。
2.あなたの考える人生の意味について。
400字/600字 50分
17 一般 お金がない人が治療を受ける権利について考えを述べる。 700字 50分

●傾向
’19~’16は、医療にも関わる社会的な問題がテーマとなっている。’19は、テレビや新聞で大きく取り上げられている「児童虐待」だった。厚労省は、虐待発見の入り口となる医療機関との連携を重視しており、医師が担う役割は大きい。’18は、末期がん患者が医療以外のものに頼っている時にかける言葉が問われた。そのヒントが日本医師会の雑誌「DOCTOR‐ASE」No26p2の「医師への軌跡」欄にある。緩和ケア医と実習生の対談で、実習生が、「試験なら正解になる『おつらいですね』という言葉で患者に共感を示すことに自分は疑問を感じている」と告白する。すると医師は、「共感なんて恐れ多い、すべての人を元気づける魔法の言葉なんてない」「聴かせて頂き有難うございましたと言えればいい」と答える。耳を傾け聴くことしかできなかったというこの実習生だが、患者さんの方から思いを伝えてくれたという。緩和ケア医はそれでいいのだと言う。小論文では医師の安易な共感に対し、’18福岡大が、感染症の専門家岩田健太郎の「まともな医者とは何か」という資料文中の言葉を設問にも使っている。また、終末期の患者への医師のあるべき姿は、’18の北里大。’19の川崎医大は、模擬患者に対する研修医の「コミュニケーションの問題」について、会話文から考える。慶応大の’17は、お金と治療。日本では保険証があればほぼ3割負担で医療が受けられる。それでも、経済苦でレントゲンなどの画像診断や薬を断る患者もいる実態が医療機関や医師への調査で分かった。反面、国民皆保険制度の存続が危ぶまれる中、高額な抗がん剤や白血病治療薬は保険診療が承認されている。こういった背景があり、各大学が「保険」と「医療費」を出題している。’15は、4歳の子どもへの説明だったが、’19も含めここのところ、医療、医師に関わるテーマになっている。たんに、知識・情報があれば書けるわけではなく、掘り下げて考える力が必要だが、前提となる「社会と医療」には関心を深めておきたい。
医学・医療、医師の役割対策には、ガイドブックの「2020度の入試対策:小論文編」や、大学別の解説欄から自分に必要なテーマや資料文を確認する。また、社会的な問題の確認は、メルリックス配布の『医系小論文・面接用語集』を利用する。

順天堂大学

●絵や写真を見て文章を構築する力が求められる
●絵・写真型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 写真を見て自分の思うところを述べる。(撮影者である井上考治は三歳で聴力を失った) 800字 70分
18 一般 写真(「La Viva Franse!」)を見て感じたことを述べる。 800字 70分
17 一般 兵士が猫に餌をあげている写真を見て猫の気持ちを書く。 800字 70分

●傾向
例年、小論文は1次試験で課され、絵あるいは写真が出題されている。設問中に絵や写真のヒントを兼ねた説明がついていることが多い。設問要求はシンプルで「思うことを自由に」、「感じたこと」を書けという場合が多い。
猫が登場した’17は、「猫の気持ちになって」書くという異例の設問。想像力・発想力、そして他者理解が求められていた。19は古い昔の写真だが、子どもたちの表情や作者についての付記も参考にして述べる。’18は出題意図がわかりにくいが、資料を見ていない人にも分かるように文章化する。順天堂大の、絵・写真の対象は、’19も含め子供や動物が多く、’18も男の子が二人、女の子が二人、そして所在なさげな足の長い小型犬が写っている。東日本大震災よりずいぶん前に、自衛隊員に助け出された泥だらけの犬のカラー写真もあった。また、フランスの農村画家の貧しい物売りの少年に寄り添う大きな犬、女性動物学者の顎に指を伸ばすチンパンジー、2頭の子馬・・・など。
’17は、積み上げられた土嚢の横で、外国人兵士が、彼の横顔の三分の二もない子猫を手に乗せ泣き出しそうな表情で給餌している写真。生後どの位だろうか。果たして生きられるだろうか。そんな子猫の気持ちを書けと言われても困るが、災害医療、新生児科、終末期医療などにおいて、医療者側が被災者や患者、家族を慮る気持ち、同時に相手の立場に立つことの難しさを自覚しているか(福岡大’18参照)。あるいは短時間で状況をつかむ、相手の背景を知ろうとする力であろうか。
絵・写真型や図表型の場合、序論において資料を見ていない人にもわかるように簡潔にまとめるのがポイント。資料文型の要約、あるいはインフォームド・コンセントと解釈すればよい。時間と字数も稼ぐことができる。登場者の背景を考えることは、将来医師として、患者の人生の物語を理解した医療(ナラティブ・ベイスト・メディシン)にもつながる。順天堂大では十数年前にすでに設問や面接でナラティブを問うていた。いずれにしても、事前の練習は必要である。

昭和大学

●最近の話題や国の健康政策に関心をもっているか
●テーマ型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 選抜Ⅰ期 (1日目) AMR(Antimicrobial Resistance)薬剤耐性は、人だけではなく動物に認められるので、保健衛生上、両者に対するワンヘルス・アプローチにはどのような対策があるか。 600字 60分
選抜Ⅰ期 (2日目) 中国でゲノム編集技術による双子が誕生したが安全性や倫理性の問題、クローン人間誕生の懸念、医療への貢献への可能性もある。ゲノム研究に対するあなたの考えを述べる。
選抜Ⅱ期 海へ流出するプラスチックごみによってどのような問題が生じているか。解決する手立てにはどのような方法があるか考えを述べる。
地域別選抜(セ試利用) ニーチェの四つの徳を持て 曙光より 自分自身と友人には誠実、敵には勇気、敗者には寛容、あらゆる場合には礼儀を持て。これを参考に医師に必要な「徳」はどのようなものか。
18 選抜Ⅰ期 (1日目) 2017年に政府は働き方改革実現会議を開いた。医師の労働時間は長い。だが、医師には医師法で定められた「応召義務」がある。長時間労働の改善について考えを述べる。 600字 60分
選抜Ⅰ期 (2日目) エーリッヒ・フロムは『愛するということ』のなかで、問題提起をしている。それを解釈し「愛するという技術」について考えを述べる。
選抜Ⅱ期 医療の技術革新の一方、コスト上昇により、国民皆保険の維持が困難になっている。高度医療とコスト負担のあり方について考えを述べる。
地域別選抜(セ試利用) 哲学者、三木清は『人生論ノート』で「成功」は量的に計量できるが「幸福」は質的なものだと言うが、自身の具体的成功体験のエピソードをあげ、そこでの幸福を述べる。
17 選抜Ⅰ期 (1日目) フランスの思想家の言葉から、労働や芸術と比較した「遊びの特徴」とはどのようなものか考えを述べる。 600字 60分
選抜Ⅰ期 (2日目) AI(人工知能)により、将来、失業者の増加が懸念されているが、医療分野における、人間とAIの共存について考えを述べる。
選抜Ⅱ期 ノーベル生理学・医学賞の大村氏は熱帯病の特効薬を開発し大勢の命を救った。だが、10億人はいるとみられる様々な熱帯病の感染者の制圧が容易でない理由と考えを述べる。
地域別選抜(セ試利用) 8月に国民の祝日「山の日」が出来、無いのは6月のみ。作る場合の名称と理由を述べる。

●傾向
例年、受験日・方式にかかわらず、4~6行程度の長めのテーマ型である。数行のうち前半はヒントになっており、後半が実質的な設問。 4日のうち1問は哲学的観念的要素の強いものからの引用であり、その他は社会的なニュース性が強い。’19は、ゲノム編集技術、AMR(薬剤耐性)対策など、かなり新しいテーマだったが、本欄で昨年、AMRは予想している。また、’18の「働き方改革」「医療費」「健康保険」「チーム医療」等は複数校で出題され、’19も近畿大が出題。練習には近畿大、帝京大、関西医大などの課題を600字で論述してみよう。有名人の観念的な言葉は東海大、松本歯大などを利用する。’17は’15に続きまたロボット・AIは頻出。AIの有効な利用法は手術、希少ながんの診断、病理診断、問診アプリや翻訳など幅広い。’20もがん対策、ACP(人生会議)、健康日本21(第2次)、地域包括ケアシステム、チーム医療(昭和大が標榜)など、「オリンピックと感染症、テロと災害医療」「救急医療と蘇生」など知識の整理をしておきたい。

帝京大学

●設問要求の語句を明示して論述する力が求められる

●テーマ型

年度 試験区分 内容 字数 時間
年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 (1日目) 近年、外国人の患者が病院、医院を受診する際に配慮すべきことを、「宗教」「コミュニケーション」の語句を用いて書く。 250~300字 30分
一般 (2日目) 人工知能、新薬などの目覚ましい医学の進歩による技術・技能を学ぶに当たり、
医学教育においてコミュニケーション能力が必要な理由を「患者」「医療スタッフ」の語句を用いて書く。
250~300字 30分
18 一般 (1日目) 超高齢社会における医療の問題点について、「医療費」と「少子化」という語句を使って書く。 300字 30分
一般 (2日目) 新薬ニボルマブの処方増加よる高額医療費が、
財政を圧迫しているが健康保健で国はどこまで負担すべきか「国の財政赤字」と「低所得者」という語句を使って、考えを書く。
300字 30分
17 一般 (1日目) 20年後の自分について、「専門分野」と「総合診療」という語句を使って書く。 300字 30分
一般 (2日目) 医師の生涯教育について「医療の発展」と「信頼」という語句を使って、考えを書く。 300字 30分

●傾向
’17 より小論文が課されるようになった。テーマ型だが、指示された二つのキーワードを用いて論述する。例えば、’19は、「宗教」と「コミュニケーション」というキーワードを用いて外国人患者への配慮について述べる。定住者、観光客、さらに外国人労働者の受け入れ拡大をはかるために、改正入管法が施行された。患者及び家族との言葉の壁にはAI使用のアプリを開発中である。正確に問診するにはアプリは便利である。英語力の向上も大事な一方、場合によってはゆっくりと日本語で話す方が良い場合もある。また、非言語である表情、態度も相手を安心させるためには重要である。宗教上で言えば、禁止された飲食など物への配慮、女性患者には女性医師の対応などが求められるだろう。文字数が短いので、知識情報を使いこなし、簡潔にまとめる。もう一日は、発展、進歩する医学・医療において、医学教育ではコミュニケーション能力が重要視されている理由を「患者」「医療スタッフ」というキーワードを用いて述べる。医師になった時も含め、自分の考えを医療スタッフと共有してく必要がある。つまり、患者の医療情報の共有にとどまらず、自分の考えも話しておく。医師同士も含まれる。働き方改革のために複数主治医制(帝京は附属病院とかかりつけ医の二人主治医制だが)なども出てきている。病院が力を入れている救急医療や地域の人に頼られる病院であることもチェックしてみよう。また、患者中心の医療、多死時代と看取り、地域包括ケアシステムと言われる現在、患者、家族に伝える能力と、聞いて引き出す能力がいる。また医師とは違う言葉、違う考え方の職種とも多職種協働をするには、やはり、患者情報を正しく伝え自分の方針を明確に伝える能力が必要である。’18は2日とも医療費の問題だった。患者一人に1000万円ほどを皆保険で払うことになった薬剤関連の研究者が、入試後にノーベル賞をとったので、これに限定した課題は出しにくくなったと思われる。
最近、もっと高額な白血病治療薬や、一件数十万円の検査代なども皆保険から支払われることになった。皆保険の維持、存続にも絡む問題である。本年度の対策には、新型出生前診断、ゲノム編集、災害医療・救急医療(オリンピックを含む)、医師の働き方改革、AI、児童虐待、海のマイクロプラスチックなどのニュースのチェック、資料文型の金沢医大の’19、北里大の複数年など資料文型の過去問を要約(時間がなければ読解のみも可)すると、考え方の基になり、併願対策としても有効である。

東京医科大学

●読解したことのまとめと説明する力が求められる
●資料文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般・ セ試利用 子どもと科学者のものの見方について書かれた文章を読み、
子どもがある因果関係から他の事象も因果関係に結び付けてしまうことの誤り等を理解して説明する。
400~600字 60分
18 一般・ セ試利用 菅野仁『友達幻想』より 「同調圧力」に対する説明と自分の考えを述べる。 600字 60分
17 一般・ セ試利用 神谷美恵子『生きがいについて』より 生きがいについて自分の経験をからめて論じる。 600字 60分

●傾向
やや難解かもしれない資料文を読み取り、設問要求(指示)に従って説明する力をつけたい。ひとつの練習方法としては、日本大の設問の前半部分の指示をを300字~400字でまとめてみる。また、岩手医大の課題や、兵庫医大や看護学科から鷲田清一、神谷美恵子なら’19の聖マリアンナ医大で出題されているので参考にできる。医師のあり方や医の心について、資料文の読解・解釈を踏まえて自分の考えを述べたい場合は、北里大、聖マリアンナ医大(’18~’15・・特に’17の美大の先生が学生とホスピスを訪れる話がおすすめ)。両大学とも最後の問を利用する。
’19は設問要求に答えるために読解力と共に構想力が求められる。’18の著者は2016年にがんで逝去した社会学者。本の帯に「みんな仲良くという重圧に苦しんでいる人へ」とある。発売から10年だが、少しずつ売れ続け、最近爆発的に売れたという。もともと日本は村社会と言われつながりを大事にするが、その傾向は若者も変わらない。コミュニケーション能力については小論文でも頻出であり、アドミッションポリシーにも入っているくらいである。SNSなど対面だけではない付き合いも理解し、「同調圧力」について説明した上で自分の考えを述べる。’17は神谷美恵子(1914~1979)精神科医・作家・翻訳もある。海外でも教育を受け語学は堪能。ハンセン病に関心を持ち医師を志望するが、結核に罹患、療養。20代半ば、アメリカの医学部に入るが戦争の懸念で帰国編入し、卒業後は精神科に興味を持つ。『いきがいについて』『心の旅』が出題される。静謐な文章と真摯に向き合い設問に答える。
対策としては読解力と解釈力が毎年必要である。特に時代や立場をこえて他者を理解し自己を見つめる。小論文や現代文の先生の協力を仰ぎ、課題数をこなすよりも書き直して読解力と文章力の向上をはかる方が賢明である。’19の金沢医科大や兵庫医科大は、生物学的に見えて人間について述べているので、読解や構想力の練習にしてみよう。また、’19の川崎医科大は医師のコミュニケーション能力を問うているので是非一考を。

東京慈恵会医科大学

●考察力と論理展開力が求められる
●資料文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 資料文を読む。①自分でテーマを設定する。②テーマに沿って自分の考えを論じる。経験と教育について述べた文章。 1200字以上
2400字以内
60分~120分
18 一般① 資料文を読んで、自分の考えにタイトルをつけ理由を述べる。大学教育の改革の必要性について、
大学を卒業しても就職できない若者の増加は、大学教育と企業が求めることのずれによるといった文章。
200字/600字 90分
一般② 資料文を読んで考えを述べる。フランスの学校でスカーフの着用が禁じられていることについて書かれた文章。
17 一般 資料文を読む。①テーマをひとつ選ぶ。決めた理由を示す。②テーマに沿って自分の考えを論じる。経験と教育について述べた文章。
粘土作品を作るに当たり、質を評価するグループと、作品量を評価するグループに分けた結果、量で評価されたグループの方が、
質の良いものができた。これは政治にも言えるといった文章。
1200字以上
2400字以内
60分~120分

●傾向
3年前より、小論文が復活した。60分~120分という時間も、1200字~2400字という文字数設定も、国・私大の他学部を含め異例である。
’19は経験と教育である。練習をするには、国公立の一般入試の教育学部の資料文(長め)を探す。ごく長い文章を読んで考えたい場合は、上智大学の推薦の心理の資料文。手っ取り早くというならば、金沢医大の19を使う。※神経回路の構築には初期教育における多様な経験や実体験が必要であり、その時期を逃すと意識下の形成に欠損してしまう。聴覚、視覚の例や、子猫の実験が述べられている。※発生学と変異については、動物と違いヒトは巨大な脳を持ったことで、変異の大にしても思いやる心をもったという内容である。※科学技術への考え方の変化が研究者側と社会の側から述べられている。これらを慈恵大の設定で論述してみる。新刊書で科学技術と研究などを読んでおくのもよい。ただ、3年間の内容は大きく異なるので、以下も参考にして練習してほしい。’18はそれぞれ学校、教育に関する自国の社会問題と国際的に取り上げられる問題。ニュースなどで取り上げられていることだが、文字数が長いところがネックである。フランスの学校のスカーフ問題は、異なる文化・宗教に対する、学校の中立性や生徒(スカーフを強制する父親等の男性から)の自由を守る意味合いがあった。だが、これは、他国の問題ではなく、日本においても外国人労働者が、定住にあたり自分の文化的宗教的価値を要求した際にどこまで受け入れるかという問題につながっている。いずれも、自分や自国の問題として相対化できる力が求められている。
’17における大学側の面接と小論文の説明では、自己(自分)と他者の関係という点が共通していた。小論文では、自分の考えを他者に分かりやすく伝える力、また「自分の知識を基にして状況理解、判断力を評価する」とあった。分かりやすい言葉で丁寧に書き、長い文章でも採点官が苦労せずに読めるものを目指そう。
冒頭の対策の他には獨協医大や北里大の課題を利用する。どちらも90分なので手始めにそのまま取り組んでみる。次に、120分にして自分でテーマ設定をして、2000字~2400字で論述する。長い文章における論理展開を意識した論述前のメモ作成の練習が鍵となる。全体の展開を大きな4部構成の構想を練る。次に各部をさらに2~3段落に分け、論がぶれないように何を書くか考える。できたら先生に、資料文の読解力・テーマに対する基礎知識・論理力を確認してもらうこと。

東京女子医科大学

●適性試験との時間配分が重要
●テーマ型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 あなたの母親が「遺伝性乳がん」の疑いがあると診断された。あなたと母親が遺伝子検査を受けることに賛成か反対か述べる。 800字 適性試験と合わせて60分
18 一般 一般卵子凍結に関する資料文を読んで、「賛成」、「反対」、「どちらでもない」という立場で論じる。 800字 適性試験と合わせて60分
17 一般 子宮頸がんワクチン接種における積極的推奨について、「賛成」、「反対」、「どちらでもない」から一つ選び、理由とともに答えよ。 600~800字 適性試験と合わせて60分

●傾向
’16から一般入試でも小論文が課されている。小論文の練習方法だが、課題に対する知識が無い場合は、関連した新聞記事を検索して使うか、長めのテーマ型(本ガイドブック参照・・昭和大、関西医大、短いが近畿大の医療に関する課題)から、600字30分、あるいは800字40分で書いてスピードアップをはかる。
’19は自分の母親が遺伝性乳がんの疑いがあった時、遺伝子診断を自分や母親が受けるかどうかというテーマ。20年以上前、医療制度や考え方の違うアメリカにおいて、母親が遺伝性乳がんの場合、二人の娘のうち1人は乳がんになる可能性があると言われ、十代の娘の胸を予防のために切除する例があった。保険会社は治療ではないから支払わないといい揉めた。勿論娘のアイデンティティについても話題となった。遺伝子検査も進み、近年アメリカの女優が予防的切除をしたため、遺伝性乳がん・卵巣がんが日本でも知られるようになった。家族性(遺伝性)ということは、検査結果によっては、本人ばかりではなく、周囲の血縁者も結婚、就職、人生に影響を受ける。インフォームド・コンセントからもう一つ踏み込んだ、遺伝カウンセリングにも関連してくるテーマである。そこから今年の話題は、新型出生前診断のできる施設の拡大をはかる日産婦と待ったをかけた厚労省。着床前診断のニュースもあった。40代の女性に端を発した透析中止問題もあった。ゲノム編集では中国で女児の双子誕生(昭和大で既出)。妊婦さんと風疹症候群。女子アスリートに対する鉄剤注射。結構女性に関する話題の多い年であった。オリンピックもあるので、感染症やテロと救急医療なども抑えておきたい。18は卵子凍結について。昨年のテーマも女性に関わる社会的問題である。卵子凍結は、病気の治療前に保存しておく。晩婚化や働き方の多様化により、将来子どもを持ちたいときに利用できる。’17の子宮頸がんワクチンは、国や自治体が接種を強く勧める定期接種(勧奨接種)だが、重篤な副反応報告があり、接種は停滞している。指示されたどの立場を選んでもわかりやすく述べていればよい。
昭和大、近畿大で’18には「医師の働き方改革」、19には医療と男女共同参画も出題されているので「至誠と愛」を中心に女性医師育成、役割を考えてみよう。医療に関する知識の入り口として、北里大、聖マリアンナ医大、川崎医大、金沢医大などの資料文型を読む。テーマを探す際には本ガイドブックの各大学の項で出題内容を確認すると効率的である。

東邦大学

●実施しない
※ただし、基礎学力において課題文を読んで200~240字程度に要約する問題が出題される。

日本大学

●筆者の考えの説明と自分の意見を示す力が求められる
●資料文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般
A方式
福岡伸一『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』、筆者は「生物はどのようにしてサスティナブルなシステムを維持している」と考えているかを説明した上で、
その考えに対する自分の考えを述べる。
741~800字 60分
18 一般
A方式
デール・カーネギー 香山晶訳『道は開ける』 下線部中の「考える」とはどのように「あなたそのものか」について筆者の考え方を説明し、
あなた自身にとって「考える」とはどのように重要かについて、考えを述べる。
741~800字 60分
17 一般
A方式
内田樹『日本辺境論』 ”辺境人は日本語とともに”より 筆者の考える「日本人のコミュニケーション」特性について、
本文の言葉を用いて説明し、それに対する自分の考えを述べる。
741~800字 60分

●傾向
日本大は医学・医療とは関係のない資料文である。これは、私立医大の多くが社会の中の医療を取り上げる中で、独自路線を貫いているといえる。また、設問も強引に医療・医師に引き寄せてはいない。そだからこそ、読解力対策が必要である。’19の福岡伸一は、’18の金沢医大をはじめ、医学部では「生物と無生物の間」に始まり、今回の「動的平衡」など頻出である。しかしながら、文系学部の小論文・現代文でも頻出であることから、そういった読解力が必要である。また、設問に特徴があり、設問の前半では、「○○について筆者の考えを説明せよ」、設問後半では、まとめたことに対する自分自身の考えを述べよと指示される。よって、自分の意見の土台となる筆者の考えの読解と解釈を十分に行うことが大切になる。 年度によるが文中の地味なエピソードが、実は概念的・観念的な内容になっていることもあるので、要注意。図式化や表化などの工夫をしてみよう。さきほど設問中に二つの要求があると述べたが、文字数的には意見よりも、筆者の考えの説明が少ない方が良いが、意見が書きにくい場合は説明部分を多目にして741字以上にする。岩手医大、兵庫医大なども医学・医療以外の資料文が使われていることも多い。岩手医大を使う場合は、論述の冒頭で筆者の考えを200字程度にまとめ、まとめたことに対する自分の考えを展開していく。また、兵庫医大の場合は問が複数あるので、その問いも参考にして合計800字で論述する。説明部分に特化して練習するには北里大、聖マリアンナ大の問2をすすめる。
’18の『道は開ける』は、1944年初版。「悩みの原因を根本から突き止め、悩みを克服するための具体的な方法を解き明かした不朽の名著」「悩みを克服するための方法が具体的で説得力がある」とある。『人を動かす』と二大ベストセラー。’17著者内田樹は小論文・現代文で頻出。感覚的に合わない場合ほど、読解、論述は冷静に。また、’10、’11に続きコミュニケーションは3回目。設問要求は例年通り、2点要求。’19は前述のとおり。
他大学の過去問を使う場合も含め、出題意図に即した論述になっているか、小論文の先生に添削をしてもらうこと。

日本医科大学

●状況を理性的に考えて論述する力が求められる

●図表型
●絵・写真型
●映像型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般
(1日目)
屍体や脳死患者から顔面移植ができるが、受けた側は一生免疫抑制剤を飲む必要がある。
術前術後の写真が提示され、生活の質と命のバランスについて考えを述べる。
600字 60分
一般
(2日目)
「才能」の有無がよく言われるがあなたにとって才能とは何か。考えを述べる。 600字
一般後期 ダムキーパーのアニメ映像を見て思うところを述べる。 600字 90分
18 一般
(1日目)
東山魁夷の「道」という絵を見て思うところを述べる。 600字 60分
一般
(2日目)
理想的な教育について考えを述べる。 600字
一般後期 アニメ『つみきのいえ』を見て思ったことを述べる。 600字 90分
17 一般
(1日目)
ノーベル医学・生理学賞の受賞に関する図表から自分の感じることを述べる。 600字 60分
一般
(2日目)
図表から、人口減少にどう対処すべきかを述べる。 600字
一般後期 指揮者の映像を参考にしてあなたの将来について論じる。NHK「プロフェッショナル」指揮者の回を30分見る。 600字 90分

●傾向
この数年、形式が変化している。’16には初めて絵・写真型が加わり、’17から映像型も登場している。19には説明付きで顔面移植をした女性の写真が登場し、移植の効果は歴然であるが、免疫抑制剤の影響で、12年後になくなったとある。生活の質と命のバランスについて述べる。今まで高齢者の生活の質は出題されて来たが免疫抑制剤は初めてである。’17のように年度推移の図表型の場合は、まず最初と最後の増減に着目する。次にその間の大きな変化や、横ばい状態などをまとめる。その際、後で自分が述べる分析や考察に関連する読み取りも入れておくと論展開に無理がない。’17から映像が登場したが、大学説明会の模擬授業を活かしたり、30分程度の医療番組を、メモを取りながら見る練習をしておこう。’19,18はアニメーションである。メモを取ることも大事だが、映像そのものから受ける印象、観察も大事にしたい。そこで、10分から20分程度のものを探して実際にメモ、60分論述をしてみること。3日とも形式が違うので、3年分位は取り組んでおこう。
’18の絵は順天堂大で既出。長い一本道の絵である。絵・写真型の場合は、序論でこの絵を見ていない人にも分かるように簡単に説明をする。序論の最後で、テーマか自分の論の方向性を示しておく。三段落で展開する。この絵は青森県の海辺の写生がもとだが、絵では非常にシンプルになったそうである。それだけに見るひとによって様々な感想がわくので自由に論述してみよう。アニメ『つみきのいえ』は、2008年の作品で12分。温暖化による海面上昇で沈んでしまう国を象徴しているかのようだ。、おだやかな音楽が流れる中、おじいさんはワイングラスが一つと魚のワンプレートの食卓につく。思い出が流れ最後にはまた最初の場面に戻る。だが、テーブルには、二つのグラスに注がれた赤ワインが登場している。自分の観察力を駆使し、感性と冷静な文章でまとめていこう。是非一度このアニメーションを見て頂きたい。

北里大学

●状況を理性的に考えて論述する力が求められる
●資料文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般
(1日目)
日野原重明『だから医学は面白い』日本医事新報社
問1.タイトルをつける。
問2.著者の「アート」に対する考えと、どのようにすると習得できると考えているか。
問3.医学部入学後に本文の「技(アート)」を習得するためにどのようなことを行いたいか。
35字/250字/750字 90分
一般
(2日目)
福島智『医と障害ーー治癒されぬ者の視点』「医の原点ー第3集ーー癒されぬ者からの視点」より
問1.タイトルをつける。
問2.下線部①について筆者がそう感じた理由について述べる。
問3.下線部②について人間中心の医療について具体例を挙げて述べる。
20字/200字/600字
18 一般
(1日目)
渡部昇一『知的人生のための考え方』より
問1.タイトルをつける。
問2.著者のメッセージを要約する。
問3.学問に対する態度、心構えについてあなたが重要と考えることを理由と具体例を示して述べる。
20字/200字/800字 90分
一般
(2日目)
里美清一『医者と患者のコムニケーション論』より
問1.タイトルをつける。
問2.著者が医療のツークツヴァンクに重要と考えていることを説明する。
問3.患者が医療のツークヴァンクに陥ったときの、あなたの対応を述べる。
20字/200字/600字
17 一般
(1日目)
大杉義征『新薬アクテムラの誕生』より
問1.タイトルをつける。
問2.傍線部について、指定語句を使って理由を説明。
問3.本文の内容を、人生にどういかすかを述べる。
20字/400字/800字 90分
一般
(2日目)
桐野高明『医療の選択』より
問1.タイトルをつける。
問2.傍線部について、筆者の考える「医療の限界」について述べる。
問3.我が国の超高齢社会における介護の在り方について述べる。
30字/200字/800字

●傾向
北里大では6年前から、資料文の内容が変化した。2日間あるいは1日は、医療保険制度や患者に対する医師のあり方、医学教育などである。問3も、ほぼ医学・医療に関する設問である。これは川崎医大や聖マリアンナ医大などと同様の変化である。また、’18はハンセン病者の話と緩和ケアについて。’17,’15は桐野孝明『医療の選択』、’16 ,’13は『医の未来』(矢崎義雄編)から出題。他校でも使用されているので一読を勧める。問1のタイトルの文字数は多少変動がある。19は、問2と問3の合計文字数が二日間共、同じ1000字になるように調整されている。日野原重明は105歳まで活動した小論文頻出の医師。「アート、サイエンス」は提唱者のウイリアムオスラーも含め既出。掲載の「日本医事新報」は80年近く続いている医学週刊誌で、国立大医学部では射水市民病院の延命中止問題が出題された。2日目の障害と治療の関係は読解力が必要。
’19 は是非2日分を80分~85分(実際は90分)で解いて時間の感覚を掴みたい。初心者は形式はそっくりだが、時間と字数の負担が軽い聖マリアンナ医大をやってみょう。余力があれば’17の問3「在宅介護の在り方」を、地域包括ケアシステムにおける医療と介護福祉等の協働を意識して論述してみる。北里大では患者中心の質の高い医療を目指し、多職種協働のチーム医療教育を標榜しているので16の吉岡敏正(北里大卒業生)も読んでみよう。
AI、ゲノム編集、ACP(人生会議)、救急と蘇生、鳥インフルエンザ、海洋マイクロプラスチックなども押さえておこう。

聖マリアンナ医科大学

●読解したことの説明や意見をまとめる力が求められる

●資料文型
●現代文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 (1日目) 松田雄馬『人工知能はなぜ椅子に座れないのか 情報化社会における「知」と「生命」』新潮社
問1. 文章の題名をつける
問2. 筆者が羽生善治永世7冠のインタビューを引用した理由を考える。
問3. 医療事者や患者と人工知能コンピューター技術の関わり、利点と欠点について自分の考えをまとめる。
20字/
100字/
400字
60分
一般 (2日目) 神谷美恵子『生きがいについて』
問1. 文章の内容をまとめる
問2.筆者の考える「生きがい」とはどのようなものか具体的にまとめる
問3. 文章を参考にして、病気を患っている者が生きがいを感じられるようにするために大切なことついて自分の考えをまとめる。
40 字/
100字/
400字
18 一般 (1日目) 坂田勝彦 『ハンセン病者生活史 隔離経験を生きるということ』
問1.内容をまとめる。
問2.「隔離による文化」について具体的にまとめる。
問3.感染症と社会との関わりのために医師に求められることについて考えを述べる。
40字/
100字/
300~400字
60分
一般 (2日目) 中村雄二郎 『臨床の地とは何か』
問1.題名をつける。
問2.ヒポクラテスとイオニアの自然哲学やクニドス派の医者たちとの考えの違いを説明する。
問3.患者の病気診断し、治療する医師としてのあるべき姿について考えを述べる。
20字/
100字/
400字
17 一般 (1日目) 田中まゆみ 『ハーバードの医師づくり―最高の医療はこうして生まれる』
問1.題名をつける。
問2.著者が訴えたい医師のとるべき態度をまとめる。
問3.医師に求められる重要な倫理について考えを述べる。
720字/
100字・
300~400字
60分
一般 (2日目) 横川善正 『ホスピスからの贈り物』
問1.題名をつける。
問2.ホスピス訪問から芸術家の学生に感じ取ってほしいこと。
問3.将来、終末期の患者を担当した医師としてどの様なことを大切にして接したいと思うか。
40字/
100字/
300~400字

●傾向
資料文はこの4 年、医学医療を中心に科学についても出題されている。’16から2日間とも大問3問となり、書き取りはない。問1は、題名をつけるか、ごく短い要約である。問3は、本文をよく理解した上で設問に合わせて医学・医療・医師に結び付けて述べる。
’19の神谷美恵子は看護学科でよく見るが、18には東京医大でも出題された(著者略歴についてはそちらを参照)。問3については、題名、キーワード、設問要求ともに「生きがい」であるということをきちんと押さえて読解する。(設問要求→著者名題名→資料文の順で押さえることが資料文型小論文のポイント)病者の生きがいを考えるという付帯条件は医学部に多い他者理解系である。AIの方の問3は聞いている項目が多いのに指定文字数が少ないところが難点。18には奇しくも神谷と縁の深いハンセン病患者を取り上げている。問3では「医師と感染症との関わり」が問われている。感染症について、結核やAIDSは金沢医大他、コレラと公衆衛生は獨協医大、他にもジフテリアが既出。感染症は疫学としても、国際化はオリンピックを迎える日本においては重要テーマだが、ハンセン病のように偏見の病を資料文にしたうえでの問3はなかなか考えさせる設問である。「臨床の知」は国公立医学部や現代文でも頻出。’17は、2日間とも問3で「医師」の在り方を考える。1日目はヒポクラテスの指摘通り、医師が嘘をつかないことが最大のリスクマネジメントであること、2日目は「命の尊厳の家」というホ
スピスに流れる濃密で創造的な時間について。映画「パッチアダムス」でも「ホーム(家)」が強調されるので、込められた意味に着目したい。過去問だけでは不安な人は形式の似ている北里大の問2、3の文字数を変える。川崎医大や自治医科大も問3対策になる。また、メルリックスの『医系小論文・面接用語集』で用語や最近の話題を押さえておく。

東海大学

●資料や設問が年度により変化中
●資料文型
●絵・写真型
●詩・短歌型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般
(1日目)
東京新聞18年5月6日を読んで「人生の成功は才能によるものか?運なのか?」自分の考えを述べる。 500字 30分
一般
(2日目)
木下是雄『理系の作文技術』を読んで、ナイフを使ってリンゴを剥いたことのない子供にナイフの使用説明書を書く。 500字
18 一般
(1日目)
「カバンには パソコンスマホ 紙おむつ」朝日新聞の働くパパママ川柳大賞が取り上げられている。
現在のあなたの状況や将来について一句詠み、その心境を説明する。
500字 30分
一般
(2日目)
八木重吉の「わたし わたしよ 白鳥となり らんらんと 透き通って・・・・・」という詩を読んで、感じたことを述べる。 500字
17 一般
(1日目)
AIに関する資料文より
AIが医療や生活に活用される未来にあなたはAIを役立てるか恐怖心から躊躇するか具体的に述べる。
500字 30分
一般
(2日目)
小澤征爾・村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』より 自分の好きな曲について自由に述べる 500字

●傾向
東海大で小論文が復活してから形式は変化している。指定文字数は500字だが、最初は両日とも絵・写真型、次に’16までは、1日は短い資料文型になり、’17は初めて30行近い量の資料文型が1日入り、19は写真付きの日もあった。
’19の1日目は大谷翔平選手を例にあげ、さらにイタリアの研究における才能と運、成功と失敗について取り上げた文章。これは設問に従って素直に考えを述べる。2日目は、論文と取り扱い説明書の違いが述べられ、論文における思考実験と同様後者もまた書く前の行き届いた思考実験が説明書の値打ちを決める。そして、設問がまだ未経験の子供に「リンゴを剥くためのナイフの使用説明書」を書くというもの。各前の思考実験が試されている。愛知医科大、慶応大、産業医大等でも知らない人に伝える課題が出題されて来た。インフォームドコンセント、後輩への指導、いろいろな場面で遭遇する説明と共通している。18は資料に子育て川柳が載っており、それを参考にして、自分の現在の心境を川柳にする(用紙の上部に川柳記入欄あり)。また、作った心境を、川柳欄の下の原稿用紙に500字書く。川柳だから、自分を客観視しユーモアにくるむ力がほしい。2日目は’16同様詩が提示されている。1日目と違い、説明はないが短く平易な詩だから気負うことなく素直に感じたことを述べる。500字だから、3段落構成で、「詩の全容(あるいは特に惹かれた部分)⇒自分の解釈⇒まとめ」といった流れでまとめる。’17の人工知能(AI)に関する資料文は、6段落構成の文章。’19の1日目同様、設問要求の語句を意識して資料文を100字程度にまとめ,3段落構成で展開する。時間が短いので、構想に時間がかけにくい点は踏まえておく。
昨年もこの最終部分で予想したように’19も変化したので、資料文型の読解と短い要約練習と、今までの東海大の型、愛知医大や産業医大のユニーク問題もチェックしよう。

金沢医科大学

●読解したことを300字以内で要約する力が求められる
●資料型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般(1日目) 浅島誠『生物の「安定」と「不安定」ーー生命のダイナミクスを探る―ー』を読んで要約する。 300字 60分
一般 (2日目) 小泉英明『脳の発達と幼児教育』井村裕夫編「医と人間」所収を読んで要約する。
一般後期 野家啓一『科学哲学への招待』を読んで要約する。
18 一般 (1日目) 内田樹『反知性主義者たちの肖像』(内田樹編「日本の反知性主義」)を読んで要約する。 300字 60分
一般 (2日目) 福岡伸一『新版 動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』を読んで要約する
一般後期 羽生善治 NHKスペシャル取材班『人工知能の核心』を読んで要約する。
17 一般(1日目) 入山章栄『経営学の最先端から見る 日本企業が失敗を活かせないのはなぜか』を読んで要約する。 300字 60分
一般(2日目) 坪内道夫他『基準値のからくり 安全はこうして数字になった』を読んで要約する。

●傾向
かなり長期にわたり、60分で300字要約だった金沢医大は、’20から形式が変わるようだ。獨協医大のように問1.要約、問2.意見。あるいは、岩手医大、日大などのように1問で600字あるいは800字で意見を求めるかもしれない。さらには聖マリアンナ医大のように、タイトル、説明、意見といった形をとるかもしれない。テーマ型もある。そこで、他大学の過去問を使って、合計60分で300字要約と、意見300字程度を書いてみてもよい。併願校対策も兼ねて事前対策で乗り切って欲しい。
’19は科学に対する考え方の変化、神経回路の構築は子供の頃に最適期があり、それを逃すと欠損してしまうので、自然も含めた多様な環境の中の実体験が重要だという話、発生学から動物と違いヒトは巨大な脳をもったからこそ変異の大きい他者(障碍者)を思いやる心を持っているという話。科学については、北里大等でも同様の出題がみられるので、一読しておくと形式が変化してもまた併願校でも例として使える。他の2日間も同様である。’18の内田樹は現代文や他校でも頻出。動的平衡の福岡伸一は日本大等でも既出。また『生物と無生物の間』は著名。後半を中心にまとめる。羽生はAIをセカンドオピニオンに見立てた将棋との共存についてふれているので、そこを理解しておけばまとめやすい。また、’17は両日とも、「日本と欧米の違い」、「安全に対するとらえ方の違い」という二つの立場の対比をつかむ。1日目は書く内容の整理をして、日本に今こそ求められる長期的展望の必要性を読み取る。2日目は安全と安心について。国や専門家と、その見解に反対する人たちとの議論がかみ合わないのは、実は安全という同じ言葉の中に二つの要素があるからだというところがポイント。例年最終部分が重要だから先に必要文字数を数えてから要約に入る。’20は予測がつかないのでテーマ型の他大学も参考にしてニュースもチェックしておきたい。

愛知医科大学

●構想を練る力が求められる
●テーマ型
●絵・写真型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 (1日目) 高山邦男『インソムニア』より、
「昨夜猫を轢き殺したわれにして人の規制に許され働く」を読み感じ・考えたことを記述する。
600字 60分
一般 (2日目) マイナル・サンデル『それをお金で買いますか』より
あなたは結婚式の付添人の祝辞に落涙するが、それはオンラインで購入したものとわかる。
あなたは気にするか、祝辞の価値は当初よりも落ちるか。あなたの考えと根拠を述べる。
600字
18 一般 (1日目) 11の図を見てもっとも共感できないものについて、理由を書く。
そのイラストにタイトルをつける。
100字/
500字600字
60分
一般 (2日目) ある大学生が古道具屋で買った壺から現れた壺の精が何でも願いを一つかなえると言った。
100万円欲しいと言ったら盗んでくるし、永遠の寿命が欲しいと言ったら、ほかの人の寿命を奪って学生にあげるのだ。
この学生はどんな願いを願うかストーリーを創作する。
17 一般 (1日目) インターネットサイトで見つけた相談への答え。
「医学部浪人生。自身の心の病気をきっかけに医者を目指し、精神科医志望。
ただ、死への恐怖心が強く、解剖や患者さんへのかかわりが不安。恐怖心の軽減はできるか」といった内容。
600字 60分
一般 (2日目) 最初と最後の1文ずつ(自分は人に本当の気持ちをいわない子どもだった。
なぜなら・・・・・・・今でも本当の気持ちを言わない。)が示されており、
2文目の「なぜなら」に続くところから、物語の主人公の立場で書く。

●傾向
’19は2日ともテーマ型と言えるが、例年通り内容はユニークである。’19の1日目は昼間は親の介護、夜はタクシードライバー、そして歌人の短歌。動物愛護法は改正になったが、獣医師が国に働き掛けても、飼い主にとって伴侶であっても、犬猫は轢いても器物である。人の法律ではそうである。また’19の獨協医大の資料も参考にしよう。筆者が小学生に「100万円の犬の飼い主が自分の犬を襲おうとした1万円の犬を傷つけても無罪、逆だと器物損壊になると言ったらざわめき始め、学問を究めてきた私には驚きであり、新鮮だった」という文章が出題されていた。最近、絵や音源型などを取り入れる大学も増えており、その場での処理力・思考力が必要になった。一方、長めのテーマ型には、愛知医大のようにそれらとも違い、知識、情報、倫理観などを総合的に考慮して述べるものもある。
’19の2日目は涙を返せと思うのか、「普通」なのか、もっと社会的な課題として捉えるのか。オリンピックのマークではプロが借用して著作権、倫理観、才能が問われ大問題になった。課題は身近なことだが、出題者と受験者の感覚の壁もあるので、ほどほどが難しい。’18のイラストは、あまり迷わず素直に選び、論述の方に力を入れよう。’17の1日目は、医学部受験生の相談に答える。志望は同じでも自分とは全く違うタイプかもしれないが、将来、患者さんや、ご家族から相談を受けた時、あなたはどう答えるだろうか。医師になるということの自覚が求められる。2日目は逆にあなたが試されているような課題である。慎重に書こう。’
じっくり構想を練り、分かりやすい構成を心がける。長めのテーマ型は’19,’18の関西医大、だいぶ前の日本医大。また、イラストは’18の産業医大でも出題された。かつては資料文型も続いていたので、本ガイドブックを参考にそちらも練習しておこう。

藤田医科大学

●実施しない

大阪医科大学

●非公表
●テーマ型
※時事的・社会的テーマと医学・医療テーマの2題から1題を選択する

関西医科大学

●社会的問題について考えを述べる力が求められている
●テーマ型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般前期・セ試利用 将来臨床医を志す者として、「医学生も同年齢の『普通の』学生と同じに振舞い同じ気持ちになれば、
多くの患者さんと同じ気持ちにたてる」と、「異なる行動・考え方が求められる」という相反する意見にどう考えるか。
500字 45分
一般後期 近年、へき地医療、救急、産科、外科など肉体的・精神的に過酷な領域の敬遠は、
地域と診療科の不均衡による医療崩壊の一因である。医師を志すあなたの考えを述べる。
18 一般前期・セ試利用 手術による完治可能性は60%だが、超高齢のためリスクが30%。
あなたが医師なら手術と緩和医療のどちらを勧めるか考えを述べよ。
500字 45分
一般後期 税金は高齢者ではなく将来を背負う世代に重点的に使うべきか、
どちらに使うか明確にして考えを述べよ。
17 一般前期・セ試利用 健康寿命について述べよ 500字 45分
一般後期 人工知能と医学について

●傾向
’19からかなり長目のテーマ型になった。論述文字数は短いのに、テーマを写せば100字は行ってしまうという長さである。だが、一方で、テーマに対する知識でどうにかなるというより、医師を目指す自分を取り巻く問題として医療と社会を見つめておきたい。’19前期は北里大は、医学部教育や医師の在り方を論じた資料文が多いので、一度目を通しておくとよい。後期は医師の地域的、診療科的偏在について理解していれば書きやすいテーマである。’18の1日目は、よく考えると設定が曖昧で難しい。例えば完治可能性とはどういう病気がどのように治るということなのか。また、超高齢とは何歳位を指しているのか。手術のリスクとは手術中に死亡する可能性を指すのか。また、緩和ケアとは、がんと告知された時から始まるというがどうなのか、次々と疑問がわく。また、演習時に「医師の立場」だけで考える人は、手術派に傾くが、家族の立場も踏まえることのできる人は超高齢だから、緩和ケアということもしっかりと考えることができる。現に国はがんと診断された時からの緩和ケアを推奨しているし、緩和ケアチームも在るわけだから、医師イコールと手術と単純に考えるにしてもインフォームドコンセントや治療法の選択に当たり、ACP(アドバンスケアプランニング)も考慮し、配慮のある書き方になるだろう。医療費に関しては保険も含めて頻出である。
短いテーマ型なら、久留米大、近畿大、長目は昭和大、ユニークは愛知医大、医療以外は杏林大を参考に練習をしてみよう。特に’18、’19は、医療系に詳しい先生に添削をしてもらうと良い。

近畿大学

●短い字数で、用語知識や社会的問題をまとめる
●テーマ型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 前期 医療における「男女共同参画」についてあなたの意見を述べる。 400字 40分
C方式前期・中期 AI(人工知能)が医師の仕事を奪うという意見について考えを述べる。
一般後期・C方式後期 これまでの皆保険制度と今後の医療制度のあり方について考えを述べる。
18 一般 前期 「終活」という言葉がよく言われるが人生の最終末をどう迎えるかは本人、家族、医療費の社会的負担から重要な問題だ。
現状把握と改善について考えを述べる。
400字 40分
C方式前期・中期 医師のプロフェッショナリズムについて2点あげられており、自分が考える三つ目の要素を述べる。
(別欄に要素を記入)
一般後期・C方式後期 「働き方改革」について、医師としてどう考えるか。
17 一般 前期 梶田隆章がノーベル物理学賞を「純粋科学」で受賞したが、純粋科学に対する自分の考えと受賞への評価 400字 40分
C方式前期・中期 医学の進歩がもたらした困難な課題について、具体的な例を挙げあなたの考えを述べなさい。
一般後期・C方式後期 “患者主体”の医療をめざすチーム医療において大切なことは何か

●傾向
例年テーマ型だが、’19も含め受験日によってテーマの長さが異なる。自分に関すること、医療に関すること、ニュース性のあるものなどほぼ3パターンある。医療に関するテーマの場合は基礎知識がほしい。また過去問と関連した出題や、’16の「チーム医療」のように再登場もあるので何年か分はチェックしておきたい。
’19の「人工知能」が仕事を奪うかというテーマは頻出。まず、獨協医大、東海大他の資料文型から、基本を読み取る。 そこからさらに今回の「医師の仕事を奪うか」であるが、実際には診断や手術に使われており、最終責任は医師がとること、何か起きたときには医師の知識と経験が必要といったことがメディアでも取り上げられている。また、画像診断には優れた力をAIは発揮すると述べている病理学者もいるし、ワトソン君の診断の研究も行われている。共存の道を探ろう。皆保険制度については岩手医大、獨協医大、北里大等の資料文型で概略をつかみ、医療技術の進歩による高額化と高齢化、生活習慣病による医療費の増加が皆保険を圧迫している。頻出のテーマだから、皆保険がなくなったら自分(医師)はどうするのか身近な問題としてとらえてみよう。男女共同参画は、医師の過重労働や働き方改革(本学含め複数校既出)にも共通するテーマである。18の「終活」は話題だが医学部ではこれのみ。医師の「働き方改革」は’19も出題されている。本年度も引き続き、医療も含めた話題性のあるテーマには関心をはらっておきたい。’17の「10年後の日本の医療」は2025年に団塊世代がすべて後期高齢者になることを踏まえた地域医療、地域包括ケアシステム、多死時代の看取りを考えてみよう。ついでに、多職種連携のACP(アドバンスケア・プランニング・・人生会議)、「再生医療の課題と展望」には効果と安全性の課題があるが、話題の医療倫理的な問題といえば、ゲノム編集技術、新型出生前診断、着床前診断などもチェックしておこう。
面接対策を兼ねた知識の補強として、メルリックスの『医系小論文・面接用語集』は便利である。昨年の解説に続きAMR(薬剤耐性)対策、オリンピック・パラリンピックに向けた感染症対策、テロ・災害医療、ボランティアなども押さえておこう。

兵庫医科大学

●下線部の説明や意見を簡潔に述べる力が求められている
●資料文型
●図表型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 本川達雄「人間にとって寿命とは何か」
問1. 下線部(1)と反対の意味の抜き出し
問2. 下線部(2)の具体例を本文中の言葉を用いて3つ挙げる。
問3.機械が現代人にもたらした現状を述べる。
問4. 下線部(3)について今後の自分の生き方をこれまでの生き方に言及して述べる。
60字/80字/20字/300字以内 60分
18 一般 岩田正美『現代の貧困』より
問1.語句の空欄補充×2
問2.文中の外来語の意味をそれぞれ説明する。
問3.文中の「貧困」と「格差」の違いを述べる。
問4.タイトルをつける科学的根拠に基づいた教育について考えを述べる。
問5.現代の我が国の貧困の原因を考察し対策を述べる。
2字×2/50字×2/100字/20字/400字 60分
17 一般 中室牧子『学力の経済学』より
問1.語句の空欄補充×2 
問2.図2を踏まえてAの成績低下の理由を述べる。
問3.空欄に文章を入れる。
問4.科学的根拠に基づいた教育について考えを述べる。
60字/50字/50字/300字以内 60分

●傾向
資料文は私立医学部の中では長い方で、A4で1枚半から2枚程度。’17だけは 資料文はA4 1枚と図表が1枚ついていた。’19は設問形式に少し変化があった。18までの空欄補充(単語)がなくなり、抜き出しと、資料文中の語句を用いた説明問題。(文字数制限はなく、1行程度で3つまとめる)設問数は多いが各問の文字数は短いので、細かい設問要求や下線部に対する説明練習は必要。過去問以外では、聖マリアンナ医大の’14以前や、国公立の医学部及び看護学部から、資料文の量と設問数の近いものに取りくむ。近年総文字数は減っているので、時間的なゆとりはある。
’19の問4の下線部は「生きる力」。生物学者本川達雄の文章。『ゾウの時間 ネズミの時間』は今でも出題されている。よりよく生きるには、機械に代替させるだけではなく、自らのエネルギーを使って、時間をかけて対象と向き合い、身を持って体験すること、理論的思考を身につけることも、教育もまたしかりといったことが述べられている。例年の文章及び設問に比べて書きやすいと思われる。18は下線部の語句の説明は「アウトソーシング」と「ニート」であるが、本文中には都合よく50字で抜き出せる部分がないことである。約10年前の著作なので、受験生にとっては死語に近い言葉かもしれない。アウトソーシングは直前の「下請け」をヒントにする。’16の鷲田清一よりも読解しやすいので、問5の400字は意外に時間がかからないと思われる。’17は図表の読み取りがポイント。空欄に語句を入れる課題は’16、’15や推薦でも出題されている。
最初に過去問は3年分位は書いて先生に添削してもらおう。19は意外に時間がかかるので時間配分に留意する。

川崎医科大学

●読解力と解釈力が求められる
●資料文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 山口育子『賢い患者』
医師と模擬患者のコミュニケーションに関する問題点の有無を論ずる。
800字 50分
18 一般 山海嘉之『革新的ロボット治療を創る』
問1.下線部の説明。
問2.下線部中の「未来社会」に対する考えを述べる。
200字/600字 50分
17 一般 井村裕夫『健康長寿のための医学』
問1.下線部の説明。
問2.下線部に対する考えを述べる。
200字/600字 50分

●傾向
テーマ型から資料文型になって数年。’18までの4年間は、小問が2問あり、合計800字だった。’19は、1問800字となった。設問を意識して構想を練ることに変わりはないが、800字なので、論述は、4段落程度にすると、読み手も論の流れがつかみやすい。序論は資料文の概略か要旨をまとめ、結論では設問要求の語句(今回なら「コミュニケーション」等)を使って意見をまとめ、設問要求に答えていることを示す。また前後の段落の内容が関連しているか、論展開に注意する。テーマ型から、資料文型になった初年度は、「語る」「物語」といった、当時の私大医学部頻出のナラティブ系だった。だが、次年度からは医療制度や医学部初出の語句・概念が出題され、医療の現状に迫るテーマが続いている。「混合診療」 EBM(エビデンス・ベイスト・メディシン・・根拠のある医療)(16)、「健康長寿社会」 、「先制医療」 「フレイル」(17)、「医療とテクノロジー」「近い将来に直面する課題」(18)。 さらに、’19の資料文は、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの代表者の文章。初期研修医と模擬患者の医療面接の会話には、設問要求の「コミュニケーション」は出てこない。だが、COMLの目的・趣旨には「日本で初めてメディアでインフォームド・コンセントの必要性が紹介された1990年に発足」、また、「コミュニケーションは一方だけの努力では成り立たない」とある。また、設問では、その問題点の有無を問うており、非常によく考えられたテーマである。’18以前の問1は下線部(前述の下線の語句参照)の200字説明だったが、本文に参考となる説明が少ないので、結構難しい。
知識も兼ねた資料文型だと北里大、聖マリアンナ医大、金沢医大、混合診療や、先進医療などの語句はテーマ型の近畿大。新しいテーマだと昭和大の「ゲノム編集」「AMR(薬剤耐性)対策」などを参考にして資料をチェックしておくと役立つ。また、北里大や聖マリアンナ医大は下線部説明や意見論述の対策も兼ねるので手に入れば練習用にするとよい。意見の根底には医学・医療の発展、患者家族のために尽くす姿勢が求められる。

久留米大学

●医療や受験校に対する知識・情報が問われる
●テーマ型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般前期 医師として社会に貢献できること 800字 60分
一般後期 医師の働き方について
18 一般 医師の働き方について 800字 60分
17 一般 ストレスに対する予防のあり方 800字 60分

●傾向
例年、短めのテーマ型である。’19も、’18に続き、医師という職業と医療に携わる自分の生活のあり方が問われている。医師の働き方改革については、’18に昭和大、近畿大で出題されている。医師法、歯科医師法には、応召義務が定められており、それと、医師の過重・長時間労働が合わさり、勤務医の過労死、離職が課題となっている。自分の医師としての将来像や理想の医師像を、医療の社会的役割と関連させて考えておくと面接対策にもつながる。地域医療を県単位で考えると、大学病院や公立病院が中核となり、急性期の医療を担い、病病連携や病診連携、訪問診療、看取りまでを含む地域包括ケアシステムの構築を目指している。多職種協働で超高齢社会を乗り越える狙いである。最近は、大病院も退院後のための訪問指導を行うなど、地域医療の在り方も変わってきている。久留米大の付属病院や医学部のホームページ、パンフレットも小論文のヒントになる。また、厚労省の地域包括ケアシステムの図をみると地域医療の全貌がつかみやすい。テーマ型対策には、近畿大、関西医大、久留米大の推薦の課題、昭和大の課題を使う。先に、北里大、聖マリアンナ医大、川崎医大、福岡大などの医療に関する資料文を読むと知識の幅も広がる。’18は、ワークライフバランスは、女性の問題としてよくテレビや新聞で話題になる。’17は、ストレスの予防が出題された。ストレス社会と言われる現代日本において、ストレスと無縁に暮らすことは難しい。ストレスというと、精神的なものをイメージしがちだが、睡眠不足もストレスになる。夜更かしだけではなく、夜寝る直前までパソコンや携帯を見ていると、強い光が脳に刺激を与え、睡眠の質が下がる。朝の光を浴びて体内時計をリセットし、自分の生活習慣を見直してみよう。金沢医大、産業医大では資料文型で出題されている。
テーマ型だが、800字あるので、しっかりとした構成が必要である。練習の際には、医系の小論文に慣れた先生の目で添削や講評をしてもらうこと。メルリックスの『医系小論文・面接用語集』もシンプルにまとめられていて使いやすい。

産業医科大学

●資料文を理解し簡潔にまとめる力が問われている
●テーマ型
●資料文型
●図表型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般 1.ブレーズ・パスカル 前田陽一・湯木康訳「パンセ」 著者が人間を「考える葦」と例えた理由を説明する。
2.戸田山和久『「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス』
「喫煙率」と「肺がん発生率」のデータ間に相関関係がある場合「喫煙」と「肺がん」間の因果関係の有無を検討するための
注意点について本文を参考にして考察する。
3.「医は仁術という言葉について考えを述べる。
200~400字/指示なし
/400字
120分
18 一般 1.外山滋比古『志向の生理学』より
問1.あるプロ棋士の言葉から、二流、一流、超一流について示し、本文中の「グライダー人間」と比較し、
解答欄の相当する欄に○をつけて、理由を述べる。に雑誌が科学研究の発展に与えたのはなぜか説明。
問2.「グライダー兼飛行機のような人間」になるためにい大学でどのように学習するか考えを述べる。
2.田崎晴明『熱力学ー現代的な視点から』
問1.還元主義的な科学観について説明する。
問2.筆者の科学観に対する考えを述べる。
3.絵の状況を説明し、二人の人物の吹き出しに言葉を入れる。
4.ゾウを知らない小学4年生に文章で説明する。
400字/400字 120分
17 一般 1.L.R. Squire et al .著『”Fundamental Neuroscience Elsevier Inc.2008』p.10より
問1.研究活動が個別に行われていたのはなぜか説明する。(記入用枠あり)
問2.現代の科学研究の発展にインターネットを主とする情報公開が大きな役割を果たしていることに対する考えを述べる。
2.ケリー・マクゴニガル著 神崎明子訳『スタンダードのストレスを力にかえる教科書』
問.本文を踏まえ「ストレスと健康」いついて考えを述べる。
400字/600字 120分

●傾向
’18から形式が大きく変化した。’19は、資料文型2問とテーマ型1問の計3問。’18は、大問が4問。資料文型(A4用紙2枚)が2問。文字数指定のない説明問題や400字で意見を述べるもの。問3は初登場のイラスト、問4は文字数指定のないテーマ型の説明問題。2年間共、マス目のない解答用紙もあるので、原稿用紙以上に読みやすい大きさで、丁寧な字を書くように心がけること。
’19の1問目は有名なパスカルの「パンセ」から人間は考える葦であるという有名な言葉。文中には「われわれの尊厳のすべては考えることの中にある」「よく考えることを務めよう。ここに道徳の原理がある」などの表現があるので、自己の内部の思考が自己をかけがえのない自己足らしめることなどについて、文字数が短いので簡潔に説明する。2問目が難しいが文字数規定はない点と時間配分に留意する。3問目は昨年の「ゾウを知らない人へのゾウの説明」よりも易しいので、 2問目の考察と論理的な説明の時間を確保したい。’18の外山滋比古は小論文や現代文で頻出。’19にも他大学で出題された。特にグライダー人間の下りは、他大学医学部でも既出。設問をよく理解し、問2は大学での学習について述べる。3問目のイラストは、向き合うAさんとBさんの間には大きな丸いアナログ時計があり、針は7時1分位になっている。向かって左側のAさんは右手に四角い鞄を下げている。右側のBさんの右手は時計を指している。演習では、午前7時と午後7時に解釈が分かれた。吹き出しのセリフにはシンプルにして状況をきちんと文章化する。’18,’16の愛知医大でも練習できる。4問目も、立場の違う人、
知識のない人わかりやすく説明する力が求められる。慶応大でも同様の出題があり、医療におけるインフォームド・コンセントにも通じる。’17はストレス・パラドクスについて。ストレスの多い人の方が人生の満足度が高いこと、ストレスと生きがいの関連性について述べられた文章を踏まえて「ストレスと幸福」について考える。新傾向を知るために2年分は解いておいた方がよい。

福岡大学

●資料文の理解と簡潔にまとめる力が求められる
●資料文型

年度 試験区分 内容 字数 時間
19 一般・セ試利用 金子隆一 「新たな人口・社会レジームの到来と労働力」 
問 人口減少と少子高齢化を述べた文章から、将来の暮らしや社会の発展のための具体的な対策について考えを述べる。
600字以内 60分
18 一般・セ試利用 岩田健太郎『ためらいのリアル医療倫理』 
文中の「まともな」医者と自分の考える「まともな」医者の共通点と相違点を述べる。
600字程度 60分
17 一般・セ試利用 曾野綾子『思い通りにいかないから面白い』 600字程度 60分

●傾向
資料文型が続いている。文字数については、従来の600字程度という指示から’19は600字以内に変化。資料文の内容については、設問の前半で説明されている。これをヒント及び前提として後半の設問に答える。’19は耳慣れない語句が出てくるが、きちんと読解して、設問に答える。’18の岩田健太郎は日本初の感染症雑誌J-IDEOを刊行した感染症の専門家で、最近小論文に登場するようになった。この雑誌では保健所長のコーナーもあり、18年7月号は女子医で出題されたHPVワクチンがテーマになっている。福岡大では科学や医療の話が続いているが、’17は、’18の自治医科大、北里大でも既出の作家である。’19は、医療以外からも社会を考える視点を持つ練習になる。’18は資料文も設問も「まともな医者について」というもので、かつて産業医大で医師の行動の問題点が問われた。今回はそれをこえているかのようだが資料文をよく読むと、患者の立場に立てると安易に思うな、患者の立場に立つのは非常に難しいが、それでも理解に努めようとすることが大事だと言っている。’19の川崎医大は医師のコミュニケーションの問題の有無を問うているのでついでに読んでおこう。’17は18の自治医大と同じ著者だが、こちらの文章の方が医療系には共感しにくいかもしれない。下線部の「この世のすべてのものは対極的なものの中間を漂っています。だから、最善とか最悪というものはほとんどないのです」について自分の考えを述べる。A4で1枚半強あるが、着目するのは、題や下線部と近い言葉を使っている最終段落である。「人間は違っていて、いろいろと異なった考えがあることの方が面白く思えてきた…」、またその前段でも「考え方、生き方の違い」に触れており、最終文には「良いとか悪いとかの問題ではなく」とある。これらの部分の解釈には、エピソードも理解の助けになるので丁寧に読んでみよう。医療以外の課題対策には、岩手医大、日大、東海大などを使って練習をする。