私立医学部の小論文問題の過去の傾向および対策(テーマの傾向・参考書) | 私立医学部・歯学部予備校のメルリックス学院

医学部受験合格必勝のための受験情報・対策ガイド

小論文-傾向と対策

小論文-傾向と対策

岩手医科大学

2021年度は実施しない

東北医科薬科大学

●医学・医療、医師としての意識が求められる。
●テーマ型

●傾向
医学部創設の’16から、小論文が課されて来た。テーマ型のため、設問要求に即した構想を練る練習と、知識や情報をつけるという2つの方向から対策をとりたい。後者は他大学の小論文や面接対策も兼ねている。’20は、今まですでに高齢化については出題されてきたが、「政策」ということを問われているので、「地域包括ケアシステム」をヒントに地域全体の中で医療はどうあるべきか、また高度急性期の病床問題、国民皆保険制度と高齢者の自己負担、遠隔診療などすでに実施されていることを基盤に意見を述べる。また、他者との関係性については、これは医療者間、患者・家族との関係、入学後の学生間など、自己の主体性を持ったうえでの協調性や連携について考えてみよう。安易な「チーム医療」という言葉ですませず、自己を軸にして書いてほしい。’19の「義務と権利」を書くにはインフォームドコンセントが便利である。患者にも義務はあるが、医師には病状、処置、病名、複数の治療法、予後、検査の目的と方法、薬の作用と副作用などの医療情報を説明する義務があること、また、治療をしなかったらどうなるかも説明すべきである点を押さえる。アメリカでは法的に医師の説明義務となっているが、日本は医療法の中に入っているので、インフォームドコンセントにおける医師の義務が曖昧である。また、日本では「説明と同意」と訳され、医師の分かりやすい説明や信頼関係の構築が中心になっているが、本来は患者の知る権利や自己決定権を尊重し、納得の上の治療法の選択を支えるべきである。1973年の全米医療協会の「患者の権利章典」も参考になる。’18は、加害者の人権にも配慮される現代において、被害者の人権、プライバシーをメディアがどう守るか、またメディアからどう守るか、そもそもなぜ両者の人権を守るべきなのか、よく論じられているテーマである。また、医療の現場においては、患者の人格・人権を守る意識が求められる。医療過誤にも通じる問題でもある。3~4段落構成の構想メモを作成してから論述するようにしたい。
4年間テーマ型だが、資料文型から知識を得ておくのもよい。医学・医療なら、例年北里大、聖マリアンナ医大、金沢医大、川崎医大(’19は研修医と模擬患者の医療面接だからインフォームドコンセントを考える足掛かりになる)、岩手医大の’20、’19.また昭和大、近畿大、関西医大はテーマ型だから練習用に取り組んでみよう。メルリックス配布の『医系小論文・面接用語集』で知識・情報を押さえておこう。

自治医科大学

●医学・医療に対する真摯で冷静な姿勢が求められる
●資料文型

●傾向
例年、大問が2つあり、各400字~500字。各資料文は、A4で2~3枚程度である。私大では資料文が長い方だ。設問はひとひねりあり、指定文字数は短いので、時間と文字数の加減をつかむために、2問セットで練習をしておくとよい。この4年は反論を求める傾向にある。’20は、医学部では恐らく初めての問いで、家族の立場で病院に対する抗議文を書くというものだった。医師を批判的な視点で考えてみる問いは、産業医大で「医師の行動の問題についてえ」、’19川崎医大の「医師の問題の有無について」はあるが、自治医大はさらに新しい出題傾向となる。
 ’20の西尾幹二はドイツ思想・哲学者。そこから得た自身の思想も発表している。資料文は、当時国民病と言われた結核に罹患し、1年休学した同級生との話し。当時一足先に高校生になっていた私はつい同情の言葉を口にし彼を怒らせた。その後は年賀状のやり取りだけで歳月は流れ、彼は最近急死した。同情ということへの反論を書く。’19の外山・藤原は、私大医学部では頻出。藤原は、「今年も変わらず咲いてくれた桜の花を見ながら復興支援の消費もしよう」と述べているのに、読解力不足のためか感情的な反発が多い。’18の曽野は、福岡大、北里大等でも既出。医学雑誌のアンケートではかつて人気ベスト3の作家。『夫の後始末』という在宅介護の看取りも出版されている。資料文は、高齢の教皇が久しぶりに故郷で父母の墓参をした時の話。人々が押し寄せ子供たちは歌うが、「なぜ無言の輝くような沈黙の中にしみ透る親子の会話を奪うのか」と書く。短い要約は100字程度でまとめる。論述対策は設問に惑わされない、読解力を磨くことである。

獨協医科大学

●要約と意見をまとめる力が求められる
●資料文型

●傾向
’20は、初めて小論文が1次に課されたため、課題は1日分となっている。’21は、新型コロナの影響で、また2次に戻ることになった。例年、資料文の長さや問の形式は同じである。問1は200字要約、問2はシンプルに「本文の内容について」600字以内で考えを述べよというもの。資料文は私立医学部では長い方のA4 2~3枚だが、要約は200字と短いので端的にまとめる練習をしておく。その際は①文章全体の構造・構成をつかむ。②繰り返しに着目し、筆者の主張を絞る。③筆者の言いたいことを、かみ砕いて理解する。④30分程度で2問1をまとめる。これらの作業は問2の構想を練るステップとなる。’16、’18とリーダー、リーダーシップが続いたが、’19の2日目は「やまゆり園」の事件で、国立大学では既出。ニュース性は薄れているが横浜市の広報の扱いは大きい。1日目は法律の専門家である著者が小学校の講演で「犬は器物として扱われる」と話したら、そこに疑問を感じた彼らから文集が届いた。医師を目指す子供たちには正義の心、公共心を忘れないでほしいと結んでいる。法律家の立場だと器物扱いは普通の感覚らしいが、日本では動物虐待(死)も器物損壊扱いなので獣医たちは法改正を求めている。
’18の1日目は、若き日の私が手術に反対し、退院させた子は5年ほどで死んでしまったと親から手紙が届く。13年後の恩師の言葉から、自分は長い時間をかけて外科教育をしてもらったことにやっと気づく話。題名にも着目。2日目は「サーバントリーダー」。’16と併せて読んでおくとチーム医療、多職種連携に応用できる。’20は読みやすい資料文だが、’21は2次がまた複数回となるので3年分位要約練習等をしておきたい。

埼玉医科大学

2021年度から出題傾向が変更になり、和文および英文を含む記述式になる。

国際医療福祉大学

●設問中の条件とヒントを生かす力が求められる
●テーマ型

●傾向
17に医学部が新設された時から4年間、小論文はテーマ型である。といっても「再生医療について」などというそっけないものと違い、200字をこえている。そのため、昭和大と同様、前半には「前提」兼「ヒント」が示されており、後半がいわゆる設問である。だから、構想・構成はしやすく、いざとなれば200字から引用してしのぐこともできる。’20は、OECDの国際学調査によると、日本の子どもは根拠を示して自分の考えを述べる力が低下しているという話。その原因、背景などを考えて意見を述べる。本年夏頃、ユニセフが、OECDやEU加盟国の調査を使って、先進・新興38か国の子どもの「精神的満足度」「身体的健康」「学力・社会的スキル」の3点を分析した。日本は総合で20位と低く、米国は36位、1位はオランダだった。また、「生活満足度」も低い。これは、偏差値教育や受験競争、家庭の不和などで自己肯定感が育っていないからではないかと日本の教育評論家が指摘している。「学力・社会的スキル」では、読解力は5位だが社会的スキルが低い。一方、「身体的健康」は1位である。ところが順位を空欄にして聞いてみると生徒たちは「20位くらい」だと答える。失業率も貧困率も低い国で身体的にも健康なのになぜそのように思うのだろうか。‘19は、外国人労働者がテーマだが、’18の少子化問題やグローバル化が背景にある。国際化というと新型コロナに目がいきがちだが、来日する労働者の薬剤耐性結核の持ち込みが懸念されている。世界的にも災害は多いので災害援助活動、海のマイクロプラスチック汚染、温暖化など環境問題と人とのかかわり、WHOの動向なども重要である。
国際医療福祉大学では英語で授業をする学年もあり、在学中に途上国での海外研修も選択できる。将来の活躍の場を考えるチャンスが多い大学である。途上国での研修は、災害時の日本における医療のあり方も学べると思う。’18の少子化は、労働力や高齢化問題とも関連するので、他学部においても頻出テーマである。私大医学部では近年、「社会と医療」が多い中で、国際的な話題が続いている。ただ、本ガイドブックの大学別対策を参考にして、資料文型も書いておくと安心である。テーマ型の練習には、過去問だけではなく昭和大や、近畿大も使い、書いたものは先生に添削をお願いすること。
小論文は、知識吸収と併願校対策を兼ねて、本ガイドブックの大学別対策を参考にして、資料文型も書いてみよう。テーマ型の練習には、過去問だけではなく昭和大や、近畿大も使い、書いたものは先生に添削をお願いすること。

杏林大学

●自己を取り巻く社会生活への関心が問われる
●テーマ型

●傾向
この数年はテーマ型であるため、小論文に対する負担感は減った。以前のテーマ型時代は、「生活習慣病」について出題されたこともあり、多少の知識が必要だった。その後、数年間、資料文型・図表型が続き、受験年度の新聞記事から科学・医学、若者や高齢者に関する内容が出題されていた。また、形式が変わることもあるので、面接対策も兼ねて、若者問題や高齢化、AI、コロナなどにも関心をもちたい。
’20の「弱肉強食」は、よく動物界をたとえるが、実際には食物連鎖の一環に組み込まれているに過ぎず、人間界の状況とは違うはずだからそこを踏まえて考えよう。’19の「人を評価する」は、結構考えさせらる。なぜかというと、面接や小論文は、他科目に比べ評価基準がよくわからない。そのよくわからない科目で「人を評価する」を論述させられる。この二律背反にどう挑むのか興味深い課題となっている。’18の「さわらぬ神に祟りなし」。医学部では珍しいテーマだったので、何か裏があるのではないかと不安だったという受験生がいた。このような変化球型の小論文対策には、愛知医大、’20の関西医大(1日目)。一方、「普通に生きる」の普通とは何だろうか。将来、進む分野によっては、重症者、難病患者、災害の被災者など、平凡な日常を一気に奪われる患者や家族たちを相手にするかもしれない。「普通に生きる」もなかなか難しいテーマなので、慎重に考えること。
この2年位の大きなニュースや話題をチェックしておく。本ガイドブックの解説を参考にして、資料文型から、医療、高齢化、AIなど最近の話題に加え、変化球型のテーマには、各分野の人物を取り上げた記事もよい材料になる。それらも含め個々の効率的な練習法は小論文の先生に相談しよう。また、メルリックス配布の『医系小論文・面接用語集』に目を通しておくとよい。

慶應義塾大学

●課題に対して簡潔にまとめる力が求められる
●テーマ型 2020年度の問題が不明のため2017~2019の傾向分析を掲載

●傾向
’19~’16は、医療にも関わる社会的な問題がテーマとなっている。’19は、テレビや新聞で大きく取り上げられている「児童虐待」だった。厚労省は、虐待発見の入り口となる医療機関との連携を重視しており、医師が担う役割は大きい。’18は、末期がん患者が医療以外のものに頼っている時にかける言葉が問われた。そのヒントが日本医師会の雑誌「DOCTOR‐ASE」No26p2の「医師への軌跡」欄にある。緩和ケア医と実習生の対談で、実習生が、「試験なら正解になる『おつらいですね』という言葉で患者に共感を示すことに自分は疑問を感じている」と告白する。すると医師は、「共感なんて恐れ多い、すべての人を元気づける魔法の言葉なんてない」「聴かせて頂き有難うございましたと言えればいい」と答える。耳を傾け聴くことしかできなかったというこの実習生だが、患者さんの方から思いを伝えてくれたという。緩和ケア医はそれでいいのだと言う。小論文では医師の安易な共感に対し、’18福岡大が、感染症の専門家岩田健太郎の「まともな医者とは何か」という資料文中の言葉を設問にも使っている。また、終末期の患者への医師のあるべき姿は、’18の北里大。’19の川崎医大は、模擬患者に対する研修医の「コミュニケーションの問題」について、会話文から考える。慶応大の’17は、お金と治療。日本では保険証があればほぼ3割負担で医療が受けられる。それでも、経済苦でレントゲンなどの画像診断や薬を断る患者もいる実態が医療機関や医師への調査で分かった。反面、国民皆
保険制度の存続が危ぶまれる中、高額な抗がん剤や白血病治療薬は保険診療が承認されている。こういった背景があり、各大学が「保険」と「医療費」を出題している。’15は、4歳の子どもへの説明だったが、’19も含めここのところ、医療、医師に関わるテーマになっている。たんに、知識・情報があれば書けるわけではなく、掘り下げて考える力が必要だが、前提となる「社会と医療」には関心を深めておきたい。
 医学・医療、医師の役割対策には、ガイドブックの「2020度の入試対策:小論文編」や、大学別の解説欄から自分に必要なテーマや資料文を確認する。また、社会的な問題の確認は、メルリックス配布の『医系小論文・面接用語集』を利用する。

順天堂大学

●絵や写真を見て文章を構築する力が求められる
●絵・写真型

●傾向
例年、小論文は1次試験で課される。絵あるいは写真が出題され、設問中に絵や写真のヒントを兼ねた説明がついている場合は参考にする(’19)。設問要求はシンプルで「思うことを自由に」、「感じたこと」を書けという場合が多い。ただ’17のように「猫の気持ちになって書く」という究極の他者理解も求められる。また「物語を書け」もあった。(フランスの農村画家が描いた貧しい物売りの少年と寄り添う大きな犬の絵)。当時の医学部としては画期的な設問だが、順天大では同じ時期に面接でもNBM(本項最後で説明)とEBM(エビデンス・ベイスト・メディシン)を十数年前に聞いていた。
また、’20も含め、このように子どもや動物がよく登場する。’20の作者はアメリカの市民生活を描くイラストレーターとして1916~1963まで有名誌の表紙を飾る。本課題は1958年のもの。飲食店のカウンターのスツールにお巡りさん、隣に小さい男の子がかけている。向かいにはお店の人がいる。私はお巡りさんのおさぼりが子供に見つかったのかと思ったが、少年の足元には荷物がある。どうやらこの子が家出をたくらんだ模様。全く逆である。毎年、受験生に感想を聞くと、やはり皆色々な解釈をしながら合格している。そこで、課題を見ていない人にも分かるように説明する力と、自分なりに解釈して、きちんと文章構成をする力をつけておきたい。’19は日本の古い写真。粗末な服の人達が写っている。だが撮影者(耳は聞こえない)は、子どもたちの楽しげな表情を捉え、笑い声も聞こえてきそうだ。’18は、窓辺には女の子たち、手前には男の子たちが写り、その間を所在無げな犬が歩いている。
医療者側が被災者や患者、家族を慮る気持ちは大切だが、相手の立場に立つことの難しさを自覚しているか(福岡大’18参照)、あるいは短時間で相手の状況や背景を探る力(’20東海大)があるか。
絵・写真型や図表型の場合、序論において資料を見ていない人にもわかるように簡潔にまとめるのがポイント。資料文型の要約、あるいはインフォームド・コンセントと解釈すればよい。時間と字数も稼ぐことができる。登場者の背景を考えることは、将来医師として、患者の人生の物語を理解した医療(ナラティブ・ベイスト・メディシン)にもつながる。いずれにしても、事前の練習は必要である。

昭和大学

●最近の話題や国の健康政策に関心をもっているか
●テーマ型

●傾向
例年、受験日・方式にかかわらず、4~6行程度の長めのテーマ型である。数行のうち前半はヒントになっており、後半が実質的な設問。 4日のうち1問は哲学的観念的要素の強いものからの引用であり、その他は社会的なニュース性が強い。’20は新型コロナウイルス、’19は、ゲノム編集技術、AMR(薬剤耐性)対策など、かなり新しい医学・医療に関するテーマである。本欄ではAMRを予想した。また、’18の「働き方改革」「医療費」「健康保険」「チーム医療」等は複数校で出題され、’20は関西医大、’19以前は近畿大、帝京大が出題。そこで近畿大、帝京大、関西医大などの課題を600字で練習してみよう。有名人の観念的な言葉は東海大、昭和大(歯)、松本歯大などを利用する。’20もがん対策、ACP(人生会議)、健康日本21(第2次)、地域包括ケアシステム、チーム医療(昭和大が標榜)など、感染症、災害医療、救急医療と蘇生など知識の整理をしておきたい。

帝京大学

●設問要求の語句を明示して論述する力が求められる
●テーマ型

●傾向
’17 よりテーマ型小論文が課されるようになった。二つのキーワードを用いて論述する。例えば、’20はAIの活用について。AIは画像診断に優れており、人間よりも知識情報量は多いので特殊な病気の診断にも活用できる。日常的に経路検索や音声入力、家電等に使っているのに、医療へのAI活用には抵抗感のある者もいる。患者と向き合う時間が増えるという誘導があり、300字なので書きやすい。’19は、「宗教」と「コミュニケーション」というキーワードがヒントになっている。当時、外国人受け入れ拡大のために改正入管法が施行された。コミュニケーションと言えば、医師と外国人患者・家族との言葉の壁用にAI使用のアプリを開発中である。宗教上の配慮では、禁止されている飲食物への配慮、女性患者には女性医師の対応などが求められる。文字数が短いので、簡潔にまとめる。もう一日は、医学教育ではコミュニケーション能力が重要視されている理由については医師は、「医療スタッフ」との患者情報の共有にとどまらず、日頃のコミュニケーション能力も必要性。また、患者中心の医療、多死時代と看取り、地域包括ケアシステムと言われる現在、「患者」、家族に医療情報を伝える能力と、意思決定をしてもらうための聞く力も必要である。’18は2日とも医療費の問題だった。患者一人に1000万円ほどを皆保険で払うことになった。もっと高額な白血病治療薬や、一件数十万円の検査代なども皆保険から支払われることになった。これらは皆保険の維持、存続に絡む問題であり、’20には近畿大(推薦)でも出題された。本年度の対策には、新型コロナ、新型出生前診断、尊厳死・安楽死(ALS患者に対する医師の嘱託殺人事件があったので)、再生医療、災害医療・救急医療、医師の働き方改革、AI、児童虐待、海のマイクロプラスチックなどのニュースのチェック、資料文型の金沢医大の’19、北里大の複数年など資料文型の過去問を要約(時間がなければ読解のみも可)すると、考え方の基になり、併願対策としても有効である。

東京医科大学

●読解したことのまとめと説明する力が求められる
●資料文型

●傾向
それまでは非公表だった小論文だが、’20は入試問題が持ち帰りとなった。また、内容、設問に「物語」があるので、そこにも注目したい。6年ほど前、私立医学部では、資料文や設問において「語る、物語る」という言葉が氾濫していた。東海大学は3年ほど続き、金沢医大なども。背景にNBM(ナラティブ・ベイスト・メディシン:真実を語る医療)があり、福岡大はこれと対になるEBM(エビデンス・ベイスト・メディシン)と一緒に出題していた。ところが急に途絶えていた「物語」を、東京医大で久しぶりに見た。東京医大の推薦入試では、文学、哲学から観念的な文章も出題されて来たので、評論文の読解力以上に、自分の頭の中での観念力が問われる。今回は、かなり大人の頭が求められる。他者を慮る力、自己の経験を超える出来事への理解と、そこに派生する「人と社会への関わり」への理解力が必要。1月には阪神淡路、3月には東日本、8月には、ここに登場する日航機墜落事故が報じられる。遠い地、見知らぬ他者の死や、遺族の思いを読み解き、設問要求(指示)に従って説明する力をつけたい。練習方法としては、日本大の設問の前半部分の指示を使い300字~400字でまとめてみる。論述は、岩手医大の課題や、兵庫医大や看護学科から鷲田清一、’19の聖マリアンナ医大の神谷恵美子などを利用する。
 ’19は設問要求に答えるために構想力が求められる。’18の著者は2016年にがんで逝去した社会学者。本の帯に「みんな仲良くという重圧に苦しんでいる人へ」とあり、最近になって非常に売れた本である。「コミュニケーション能力」は小論文では頻出だが、各大学のアドミッションポリシーにもほぼ入っている。「同調圧力」は日本の国民性なのか、新型コロナとマスク着用理由でも指摘されている。
 対策としては読解力と解釈力をつけたい。小論文や現代文の先生の協力を仰ぎ、課題数をこなすよりも書き直して読解力と文章力の向上をはかる方が賢明である。’19の金沢医科大や兵庫医科大は、生物学的に見えて人間について述べているので、読解や構想力の練習に利用できる。

東京慈恵会医科大学

●考察力と論理展開力が求められる
●資料文型

●傾向
3年前より、小論文が復活した。60分~120分という時間も、1200字~2400字という文字数設定も、国・私大の他学部を含め異例である。
’20はAIについて出題されている。これは、知識・情報があった方が書きやすいといえる。数年来私立医学部で出題されてきているテーマである。今後の医療への導入は広がるだろう。特に画像診断には強い。現在のAIは1950年代に「AI」と命名されてから第3世代である。簡単に言うとコンピューターとインターネットだから、アメリカの企業がそれでは売れないと考え「AI」を借用したところ、狙いは当たり、言葉の普及は早かった。経路検索や顔認証、家電にも使われ日常化している点はみのがされがちだ。第3世代の特徴は今までファジーであった部分「目」と「耳」をもったことだといわれる。日本医師会の無料配布誌「ドクタラーゼ」でも昨年周産期のチーム医療とともに特集を組んでいた。今年は周産期の医療や新型コロナウイルス感染症が特集されている。’19は経験と教育である。国公立の一般入試の教育学部の資料文(長め)で練習可能。ごく長い文章を読んで考えたい場合は、上智大学の推薦の心理の資料文。あるいは短いものだと金沢医大の’19。※神経回路の構築には初期教育における多様な経験や実体験が必要であり、その時期を逃すと意識下の形成に欠損してしまう。聴覚、視覚の例や、子猫の実験が述べられている。※発生学と変異については、動物と違いヒトは巨大な脳を持ったことで、変異の大にしても思いやる心をもったという内容である。※科学技術への考え方の変化が研究者側と社会の側から述べられている。これらを慈恵大の設定で論述してみる。新刊書で科学技術と研究などを読んでおくのもよい。ただ、日によって内容は大きく異なるので、以下も参考にして練習してほしい。’18はそれぞれ学校、教育に関する自国の社会問題と国際的に取り上げられる問題。フランスの学校のスカーフ問題は、異なる文化・宗教に対する、学校の中立性や生徒(スカーフを強制する父親等の男性から)の自由を守る意味合いがあった。だが、これは、他国の問題ではなく、日本においても外国人労働者が、定住にあたり自分の文化的宗教的価値を要求した際にどこまで受け入れるかという問題につながっている。いずれも、自分や自国の問題として相対化できる力が求められている。
小論文では、自分の考えを他者に分かりやすく伝える力、また「自分の知識を基にして状況理解、判断力を評価する」を求めていることを念頭に練習する。 
冒頭の対策の他には獨協医大や北里大の課題を利用する。どちらも90分なので手始めにそのまま取り組んでみる。次に、120分にして自分でテーマ設定をして、2000字~2400字で論述する。長い文章における論理展開を意識した論述前のメモ作成の練習が鍵となる。全体の展開を大きな4部構成の構想を練る。次に各部をさらに2~3段落に分け、論がぶれないように何を書くか考える。できたら先生に、資料文の読解力・テーマに対する基礎知識・論理力を確認してもらうこと。

東京女子医科大学

●適性試験との時間配分が重要
●資料文型

●傾向
’16から一般入試でも小論文が課されるようになった。過去問に取り組む際、課題に対する知識が無い場合は、語句の検索だけではなく新聞記事を探すと、最近、特に話題となっているかが判明し、その場合は他校の面接や小論文対策にもなりうる。余力があれば、長めのテーマ型(本ガイドブック参照・・昭和大、関西医大、近畿大の医療に関する課題)を使ってスピードアップをはかる。
’20は提供者不足が切実な骨髄移植問題である。提供者には麻酔や提供後の一時的な体調不良に加え、型の検査や、提供時の入院に伴う欠勤等への周囲の理解が重要になる。最近、話題になっていないので、情報不足で書きにくいかもしれない。’19は自分の母親が遺伝性乳がんの疑いがあった時、遺伝子診断を自分や母親が受けるかどうかという問題。20年以上前からアメリカでは親が遺伝性乳がんの場合、娘が予防的切除を受ける場合が出始めた。日本ではアメリカの女優の予防的切除が話題となり、さらに「遺伝性乳がん・卵巣がん」として知られるようになった。検査結果によっては、周囲の血縁者も結婚、就職、人生に影響を受ける。インフォームド・コンセントからもう一つ踏み込んだ、遺伝カウンセリングにも関連してくるテーマである。’20に近畿大は、遺伝子検査が進歩し、偶然遺伝性のがんが分かった場合、医師として本人・家族への説明をどうするかを出題している。今年は、新型出生前診断の施設拡大に関する問題が話題である。最初は認定16施設から始まったが、すでに、産婦人科とは異なる科でも行われており、説明等のあり方の問題も起きている。今年は妊婦と出産と新型コロナ感染も話題となっていた。’18は卵子凍結について。昨年のテーマも女性に関わる社会的問題である。卵子凍結は、病気の治療前に保存しておく。晩婚化や働き方の多様化により、将来子どもを持ちたいときに利用できる。
昭和大、近畿大で’18には「医師の働き方改革」、19には医療と男女共同参画も出題されているので「至誠と愛」を中心に女性医師育成、役割を考えてみよう。医療に関する知識の入り口として、北里大、聖マリアンナ医大、川崎医大、金沢医大などの資料文型を読む。テーマを探す際には本ガイドブックの各大学の項で出題内容を確認すると効率的である。

東邦大学

●実施しない
※ただし、基礎学力において課題文を読んで200~240字程度に要約する問題が出題される。

日本大学

●筆者の考えの説明と自分の意見を示す力が求められる
●資料文型

●傾向
日本大は久しく医学・医療とは関係のない資料文である。私立医大の多くが社会の中の医療を取り上げる中では異色の存在である。読解力対・解釈力対策が必要である。’19の福岡伸一は、’18の金沢医大をはじめ、医学部では「生物と無生物の間」に始まり、今回の「動的平衡」など頻出である。しかしながら、文系学部の小論文・現代文でも頻出であることから、そういった読解力が必要である。また、設問に特徴があり、設問の前半では、「○○について筆者の考えを説明せよ」、設問後半では、まとめたことに対する自分自身の考えを述べよと指示される。よって、自分の意見の土台となる筆者の考えの読解と解釈を十分に行うことが大切になる。 年度によるが文中の地味なエピソードが、実は概念的・観念的な内容になっていることもあるので、要注意。図式化や表化などの工夫をしてみよう。さきほど設問中に二つの要求があると述べたが、文字数的には意見よりも、筆者の考えの説明が少ない方が良いが、意見が書きにくい場合は説明部分を多目にして741字以上にする。岩手医大、兵庫医大なども医学・医療以外の資料文が使われていることが多いので参考にする。日大対策用には、論述の冒頭で筆者の考えを200字程度にまとめ、それに対する自分の意見を展開していくとよい。また、兵庫医大は問が複数あるので、問いも参考にして合計800字で論述する。説明部分の練習対策は北里大、聖マリアンナ大の問2をすすめる。’18の『道は開ける』は、1944年初版。「悩みの原因を根本から突き止め、悩みを克服するための具体的な方法を解き明かした不朽の名著」「悩みを克服するための方法が具体的で説得力がある」とある。『人を動かす』と二大ベストセラー。
他大学の過去問を使う場合も含め、出題意図に即した論述になっているか、小論文の先生に添削をしてもらうこと。

日本医科大学

●状況を理性的に考えて論述する力が求められる
●図表型
●絵・写真型
●映像型

●傾向
この数年、形式が変化している。’16には初めて絵・写真型が加わり、’17から映像型(’18、’19はアニメ)も登場している。’20後期はドナルド・キーンの、10ページほどの文章をまず25分で読むというもの。作者に感想と意見を手紙の形式で書く。医学部では手紙を書けという課題が時折出題される。ドナルド・キーンは聖マリアンナ大で既出の日本文学の研究者。東日本の震災後、高齢ながら来日し、帰化した人で最近没。また、一般前期(2日目)は、表がついていて、4人から優勝を目指して主将、副主将を選ぶ。表には性別、国籍、対人関係、ポジションが書いてある。男性2人と女性1人は日本人。もう一人の男性は外国人留学生でレギュラーだが、日本語はほぼ話せない。さらに人望があるがレギュラーではない者。レギュラーだが対人が苦手な者などが記載されている。一般的な図表の読み取り型も出題されたことがあるが、今回は表が示す各人物の特徴に合わせて、自分で考える問題である。このところ、受験日によって形式が大きく異なるので、その場での対応力が求められる。’19には説明付きで顔面移植をした女性の写真付きで、「移植の効果は歴然であるが、免疫抑制剤の影響で、12年後になくなった」とある。生活の質と命のバランスについて述べる。今まで高齢者の生活の質は出題されて来たが免疫抑制剤は初めてである。’19、18はアニメーションである。メモを取ることも大事だが、映像そのものから受ける印象、観察も大事にしたい。そこで、10分から20分程度のものを探して実際にメモ、60分論述をしてみること。
’18の絵は順天堂大で既出。長い一本道の絵である。絵・写真型の場合は、序論でこの絵を見ていない人にも分かるように簡単に説明する。序論の最後で、自分の論の方向性を示しておく。三段落で展開する。この絵は青森県の海辺の写生を下敷きにしているが、絵の方は非常にシンプルである。それだけに見る人によって様々な感想がわくので自由に論述してみよう。アニメ『つみきのいえ』は、2008年の作品で12分。温暖化による海面上昇で沈んでしまう国を象徴しているかのようだ。おだやかな音楽が流れる中、おじいさんはワイングラスが一つと魚のワンプレートの食卓につく。思い出が流れ最後にはまた最初の場面に戻る。だが、テーブルには、二つのグラスに注がれた赤ワインが登場している。自分の観察力を駆使し、感性と冷静な文章でまとめていこう。是非一度このアニメーションを見て頂きたい。

北里大学

●簡潔な説明と、意見を述べる力が求められる
●資料文型

●傾向
北里大では6年前から、資料文の内容が変化し、医学・医療、患者に対する医師のあり方、医学教育などが中心である。医師ではなく患者の文章も含まれていたが、この2年は障碍者側の文章も出題されている。問3も、ほぼ医学・医療に関する設問である。なるこれは川崎医し大や聖マリアンナ医大などと同様の変化である。また、’18はハンセン病者の話と緩和ケアについて。’少し古い話だが’16 、’13は他校でも出出される『医の未来』(矢崎義雄編)なので一読を勧める。問1は長年タイトルだったが、説明の場合もある。19から問2と問3の合計文字数が両日とも1000字となり、受けた日によるばらつきがなくなった。日野原重明は105歳まで活動した小論文頻出の医師。「アート、サイエンス」は提唱者のウイリアムオスラーも含め既出。掲載の「日本医事新報」は80年近く続いている医学週刊誌で、国立大医学部では射水市民病院の延命中止問題が出題された。本年はALS患者に対する医師達の自殺ほう助事件があり東海大学とともにむしかえされている。2日目の障害と治療の関係は読解力が必要。
’19 は是非2日分を80分~85分(実際は90分)で解いて時間の感覚を掴みたい。初心者は形式はそっくりだが、時間と字数の負担が軽い聖マリアンナ医大をやってみょう。余力があれば’17の問3「在宅介護の在り方」を、地域包括ケアシステムにおける医療と介護福祉等の協働を意識して論述してみる。北里大では患者中心の質の高い医療を目指し、多職種協働のチーム医療教育を標榜しているので16の吉岡敏正(北里大卒業生)も読んでみよう。
AI、ゲノム編集、ACP(人生会議)、救急と蘇生、鳥インフルエンザ、海洋マイクロプラスチックなども押さえておこう。

聖マリアンナ医科大学

●読解したことの説明や意見をまとめる力が求められる
●資料文型
●現代文型

●傾向
’20は、2日間共、小林秀雄の対談が出題された。対談相手の岡潔は’18の岩手大の過去問でも引用されていた。岡は数学者だが、題名に「情緒」を入れた著作が複数ある。また、三木清は哲学者で「人生論ノート」が時折出題される。小林秀雄はかつては現代文頻出だったが、最近、他大学(医)の小論文に登場した。今回は、対談なので、両者が感じ、考えたことを設問に沿って解釈をしていく必要がある。その点、’19の神谷美恵子、’18の中村雄一郎のように、多少読み取りにくい文章でも著者一人を相手にする方が楽である。神谷(精神科医)は看護学科での出題が続いていたが、’18には東京医大でも出題されており、医学部小論文頻出の、故日野原重明医師が主張する看護師的要素に学べということかもしれない。資料文のキーワードも問3の設問要求も「生きがい」なので、誘導通りに書いていけばよい。AIは、同じものが’20に他大学でも出題された。’18には奇しくも神谷と縁の深いハンセン症患者を取り上げていたが、他大学でもこの病気は既出。今年はALSが出題されるかもしれない。聖マリアンナ大では、現代文的要素が年々減少し、’20からは一般的小論文となったので、自治医科大の課題をを600字にすると問2対策となる。最近の話題や用語をメルリックスの『医系小論文・面接用語集』で押さえておくと複数校受験対策になるだろう。

東海大学

●資料や設問が年度により変化中
●資料文型
●絵・写真型
●詩・短歌型

●傾向
東海大で小論文が復活してから、30分で指定文字数は500字で、形式がよく変化し、バラエティーに富んでいる。最初は両日とも絵・写真型、次にテーマ型や短い資料文型が加わり、’17はからは資料文が長くなり、’19からは文章に写真付きの日もある。また、愛知医大に似ている自力解決型や、詩・川柳も出題され、’20は兵庫医大的な空欄補充も出題された。このように、仕掛けは多様だが、時間が短いので、構想には時間をかけるというわけにはいかないことを心得ておくこと。
’20は、ホームズとワトソンの会話を読んで、文中の空欄に「前後の会話から推察」した2文字を入れる。前後には「推理の法則」、「推理の過程」とあるので「推理」としてもよい。自分で推察するならば「観察」が書きやすいだろう。2日目は、ノートルダム寺院の再建に向け、いち早く巨額の寄付を申し出た2大ブランドには国内から反発が出た話。筆者はそこに、近年「美徳のひけらかし」と批判され始めた「アイスバケツチャレンジ」を連想したという。これは日本でも一時期メディアが取り上げ、小論文でも出題されたALS支援。’19の1日目は大谷翔平選手を例にあげ、さらに才能と運、成功と失敗についてイタリアの研究を紹介した文章。まず、資料文を100字程度にまとめ、全体を3段落構成にする。2日目は、論文と取り扱い説明書の違いが述べられている。そして、設問はまだ未経験の子供に「リンゴを剥くためのナイフの使用説明書」を書くというもの。愛知医科大、慶応大、産業医大等でも知らない人に何かを伝えるという課題が出題されて来た。インフォームドコンセントみたいなものか。’18は資料の子育て川柳を参考にして、自分の現在の心境を川柳にし(用紙の上部に川柳記入欄あり)、その理由を500字書く。川柳だから、自分を客観視しユーモアにくるむ力がほしい。2日目は’16同様詩が提示されているが、素直にそのまま書いていけばよい。
昨年も一昨年もこの最終部分で予想したように’20も形式が変化したので、資料文型の読解と短い要約練習、今までの東海大、愛知医大や産業医大のユニーク問題をチェックしておく。

金沢医科大学

●読解したことを300字以内で要約する力が求められる
●資料文型

●傾向
かなり長期にわたり、60分で300字要約1問だったが、’20から形式が変わり、要約だけではなく、意見も求められるようになった。獨協医大のように問1.要約、問2.意見である。ただし、要約、意見ともに文字字数が短いので、他大学に比べて時間はかからないと思われる。ただ、問2は、200字なのに、設問要求の語句だけで60字以上ある。問われたことをその語句の中に代入すると、それでもう200字になってしまうので、簡潔に書く練習はしておいた方が良い。
’20の山口育子は、’19の川崎医大と同じ著者。大阪のCOMLという患者と医師をつなぐ役割を果たす団体。川崎医大は研修医と模擬患者の会話が取り上げられ、医師の対応における問題点の有無を書くというものだった。’20からの新形式が、それまでの60分300字要約のみに戻ることはないとおもわれるが、心配な人はやっておく。また、新形式は、独協医大が今までやってきた要約と意見の2問形式だが、90分で問2は600字となっている。資料文の長さも違うので、問1の200字要約も含め’20の3日分を2回ずつするか、要約が苦手な人は’19までの資料文を使って練習しておく。

愛知医科大学

●構想を練る力が求められる
●テーマ型
●絵・写真型

●傾向
’20も、両日ともテーマ型であるが、1日目は結構長い。2日目は、時折出題される現代人が食の生産現場から離れていることを、受験生に突き付けるタイプの課題である。昨年もだが、毎年、テーマはユニークである。19も2日ともテーマ型と言えるが、例年通り内容はユニークである。’19の1日目は昼間は親の介護、夜はタクシードライバー、そして歌人の短歌。動物愛護法は改正になったが、獣医師が国に働き掛けても、飼い主にとって伴侶であっても、犬猫は轢いても器物である。人の法律ではそうである。また’19の獨協医大の資料も参考にしよう。筆者が小学生に「100万円の犬の飼い主が自分の犬を襲おうとした1万円の犬を傷つけても無罪、逆だと器物損壊になると言ったらざわめき始め、学問を究めてきた私には驚きであり、新鮮だった」という文章が出題されていた。最近、絵や音源型などを取り入れる大学も増えており、その場での処理力・思考力が必要になった。一方、長めのテーマ型には、愛知医大のようにそれらとも違い、知識、情報、倫理観などを総合的に考慮して述べるものもある。’19の2日目は涙を返せと思うのか、「普通」なのか、もっと社会的な課題として捉えるのか。オリンピックのマークではプロが借用して著作権、倫理観、才能が問われ大問題になった。課題は身近なことだが、出題者と受験者の感覚の壁もあるので、ほどほどが難しい。’18のイラストは、あまり迷わず素直に選び、論述の方に力を入れよう。’17の1日目は、医学部受験生の相談に答える。志望は同じでも自分とは全く違うタイプかもしれないが、将来、患者さんや、ご家族から相談を受けた時、あなたはどう答えるだろうか。医師になるということの自覚が求められる。2日目は逆にあなたが試されているような課題である。慎重に書こう。
じっくり構想を練り、分かりやすい構成を心がける。長めのテーマ型は’19、’18の関西医大、だいぶ前の日本医大。また、イラストは’18の産業医大でも出題された。かつては資料文型も続いていたので、本ガイドブックを参考にそちらも練習しておこう。

藤田医科大学

大阪医科薬科大学

●非公表
●テーマ型
※時事的・社会的テーマと医学・医療テーマの2題から1題を選択する

関西医科大学

●社会的問題について考えを述べる力が求められている
●テーマ型

●傾向
’19前期・後期と’20の後期はかなり長めのテーマ型である。(そのため本項では簡略化している)論述文字数は短いので、簡潔に考えをまとめよう。’20の「大阪万博で実現したい医療」については、「命輝く未来」、「多様で心身ともに健康な生き方」というテーマ等も書いてあるので、医療に結びつけやすい。先端技術や新たな事業の創造ともあるので、現在の遠隔診療やAI医療について、小論文や面接練習として、過去問やニュースを見ていれば論述はたやすい。「大阪」に力をいれないこと。’19前期及び類似課題の練習には最近の北里大の資料文に目を通しておくと参考になる。後期は医師の地域的、診療科的偏在について理解していれば書きやすいテーマである。’18の1日目は、ことばの設定が曖昧であることに気づく。例えば完治可能性とはどういう病気がどのように治るということなのか。また、超高齢とは何歳位で、手術のリスクとは、緩和ケアとは、国はがんと告知された時から始めると言っているがどうなのか。また、演習時に「医師の立場」だけで考える人は、手術派に傾くが、家族の立場も踏まえると緩和ケアについてもしっかりと考えることができる。単純に手術と決めてもインフォームドコンセントや、ACP(アドバンスケアプランニング→人生会議)も考慮しよう。医療費に関しては保険も含めて頻出である。
長目のテーマ型は昭和大、ユニークな課題や’20前期は昭和大、愛知医大を参考に練習をしてみよう。特に’18、’19、’20は、医療系に詳しい先生に添削をしてもらうと良い。

近畿大学

●短い字数で、用語知識や社会的問題をまとめる
●テーマ型

●傾向
例年テーマ型である。’20は、’19も含め受験日によってテーマの長さが異なる。自分に関すること、医療に関すること、ニュース性のあるものなどほぼ3パターンある。医療に関するテーマの場合は基礎知識がほしい。また過去問と関連した出題や、’16の「チーム医療」のように再登場もあるので何年か分はチェックしておきたい。
’19の「人工知能」が仕事を奪うかというテーマは頻出。まず、獨協医大、東海大他の資料文型から、基本を読み取る。そこからさらに今回の「医師の仕事を奪うか」であるが、実際には診断や手術に使われており、最終責任は医師がとること、何か起きたときには医師の知識と経験が必要といったことがメディアでも取り上げられている。また、画像診断には優れた力をAIは発揮すると述べている病理学者もいるし、ワトソン君の診断の研究も行われている。共存の道を探ろう。皆保険制度については岩手医大、獨協医大、北里大等の資料文型で概略をつかみ、医療技術の進歩による高額化と高齢化、生活習慣病による医療費の増加が皆保険を圧迫している。頻出のテーマだから、皆保険がなくなったら自分(医師)はどうするのか身近な問題としてとらえてみよう。男女共同参画は、医師の過重労働や働き方改革(本学含め複数校既出)にも共通するテーマである。18の「終活」は話題だが医学部ではこれのみ。医師の「働き方改革」は’19も出題されている。本年度も引き続き、医療も含めた話題性のあるテーマには関心をはらっておきたい。’17の「10年後の日本の医療」は2025年に団塊世代がすべて後期高齢者になることを踏まえた地域医療、地域包括ケアシステム、多死時代の看取りを考えてみよう。ついでに、多職種連携のACP(アドバンスケア・プランニング・人生会議)、「再生医療の課題と展望」には効果と安全性の課題があるが、話題の医療倫理的な問題といえば、ゲノム編集技術、新型出生前診断、着床前診断などもチェックしておこう。
面接対策を兼ねた知識の補強として、メルリックスの『医系小論文・面接用語集』は便利である。昨年の解説に続きAMR(薬剤耐性)対策、オリンピック・パラリンピックに向けた感染症対策、テロ・災害医療、ボランティアなども押さえておこう。

兵庫医科大学

●下線部の説明や意見を簡潔に述べる力が求められている
●資料文型
●図表型

●傾向
資料文は私立医学部の中では長い方で、A4で1枚半から2枚程度。’17だけは 資料文はA4 1枚と図表が1枚ついていた。’19は設問形式に少し変化があった。18までの空欄補充(単語)がなくなり、抜き出しと、資料文中の語句を用いた説明問題。(文字数制限はなく、1行程度で3つまとめる)設問数は多いが各問の文字数は短いので、細かい設問要求や下線部に対する説明練習は必要。過去問以外では、聖マリアンナ医大の’14以前や、国公立の医学部及び看護学部から、資料文の量と設問数の近いものに取りくむ。近年総文字数は減っているので、時間的なゆとりはある。
’19の問4の下線部は「生きる力」。生物学者本川達雄の文章。『ゾウの時間 ネズミの時間』は今でも出題されている。よりよく生きるには、機械に代替させるだけではなく、自らのエネルギーを使って、時間をかけて対象と向き合い、身を持って体験すること、理論的思考を身につけることも、教育もまたしかりといったことが述べられている。例年の文章及び設問に比べて書きやすいと思われる。18は下線部の語句の説明は「アウトソーシング」と「ニート」であるが、本文中には都合よく50字で抜き出せる部分がないことである。約10年前の著作なので、受験生にとっては死語に近い言葉かもしれない。アウトソーシングは直前の「下請け」をヒントにする。’16の鷲田清一よりも読解しやすいので、問5の400字は意外に時間がかからないと思われる。’17は図表の読み取りがポイント。空欄に語句を入れる課題は’16、’15や推薦でも出題されている。
最初に過去問は3年分位は書いて先生に添削してもらおう。’19は意外に時間がかかるので時間配分に留意する。

川崎医科大学

●読解力と解釈力が求められる
●資料文型

●傾向
テーマ型から資料文型になって数年。’18までの4年間は、小問が2問あり、合計800字だった。’19は、1問800字となった。設問を意識して構想を練ることに変わりはないが、800字なので、論述は、4段落程度にすると、読み手も論の流れがつかみやすい。序論は資料文の概略か要旨をまとめ、結論では設問要求の語句(今回なら「コミュニケーション」等)を使って意見をまとめ、設問要求に答えていることを示す。また前後の段落の内容が関連しているか、論展開に注意する。テーマ型から、資料文型になった初年度は、「語る」「物語」といった、当時の私大医学部頻出のナラティブ系だった。だが、次年度からは医療制度や医学部初出の語句・概念が出題され、医療の現状に迫るテーマが続いている。「混合診療」 EBM(エビデンス・ベイスト・メディシン・・根拠のある医療)(16)、「健康長寿社会」 、「先制医療」 「フレイル」(17)、「医療とテクノロジー」「近い将来に直面する課題」(18)。さらに、’19の資料文は、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの代表者の文章。初期研修医と模擬患者の医療面接の会話には、設問要求の「コミュニケーション」は出てこない。だが、COMLの目的・趣旨には「日本で初めてメディアでインフォームド・コンセントの必要性が紹介された1990年に発足」、また、「コミュニケーションは一方だけの努力では成り立たない」とある。また、設問では、その問題点の有無を問うており、非常によく考えられたテーマである。’18以前の問1は下線部(前述の下線の語句参照)の200字説明だったが、本文に参考となる説明が少ないので、結構難しい。
知識も兼ねた資料文型だと北里大、聖マリアンナ医大、金沢医大、混合診療や、先進医療などの語句はテーマ型の近畿大。新しいテーマだと昭和大の「ゲノム編集」「AMR(薬剤耐性)対策」などを参考にして資料をチェックしておくと役立つ。また、北里大や聖マリアンナ医大は下線部説明や意見論述の対策も兼ねるので手に入れば練習用にするとよい。意見の根底には医学・医療の発展、患者家族のために尽くす姿勢が求められる。

久留米大学

●医療や受験校に対する知識・情報が問われる
●テーマ型

●傾向
例年、短めのテーマ型である。’20は再生医療、終末期医療のあり方が問われた。再生医療については杏林大、近畿大でも既出。京都大・慶応大などが臨床試験の申請を出していたのでニュース性があるが、基本的な医療倫理やインフォームドコンセントを使っても良い。終末期については国が推奨するACP(アドバンスケアプランニング:人生会議)が北里大の集団討論でも課題となっていた。高齢化が背景にある。’18、’19は、医師という職業観に関わる課題である。「医師の働き方改革」及び「応召(招)義務」については、昭和大、近畿大がテーマ型で’18に、また資料文型は聖マリアンナ大で出題されている。医師法、歯科医師法には、診療の求めに応じるという「応召義務」が定められている。そこに使命感も加わり、医師の過重・長時間労働による、勤務医の過労死、離職が問題となっている。自分の医師としての将来像や理想の医師像を、医療の社会的役割と関連させて考えておくと面接対策にもつながる。地域医療を県単位で考えると、大学病院や公立病院が中核となり、急性期の医療を担い、病病連携や病診連携、訪問診療、看取りまでを含む地域包括ケアシステムの構築を目指している。多職種協働で超高齢社会を乗り越える狙いである。最近は、大病院も退院後のための訪問指導を行うなど、地域医療の在り方も変わってきている。久留米大の付属病院や医学部のホームページ、パンフレットも小論文のヒントになる。また、厚労省の地域包括ケアシステムの図をみると地域医療の全貌がつかみやすい。テーマ型対策には、近畿大、関西医大、久留米大の推薦の課題、昭和大の課題を使う。先に、北里大、聖マリアンナ医大、川崎医大、福岡大などの医療に関する資料文を読むと知識の幅も広がる。’18は、ワークライフバランスは、女性の問題としてよくテレビや新聞で話題になる。
テーマ型だが、800字あるので、しっかりとした構成が必要である。練習の際には、医系の小論文に慣れた先生の目で添削や講評をしてもらうこと。メルリックスの『医系小論文・面接用語集』もシンプルにまとめられていて使いやすい。

産業医科大学

●資料文を理解し簡潔にまとめる力が問われている
●テーマ型
●資料文型
●図表型

●傾向
’18から形式が大きく変化した。’19は、資料文型2問とテーマ型1問の計3問。’18は、大問が4問。資料文型(A4用紙2枚)が2問。文字数指定のない説明問題や400字で意見を述べるもの。問3は初登場のイラスト、問4は文字数指定のないテーマ型の説明問題。2年間共、マス目のない解答用紙もあるので、原稿用紙以上に読みやすい大きさで、丁寧な字を書くように心がけること。
’19の1問目は有名なパスカルの「パンセ」から人間は考える葦であるという有名な言葉。文中には「われわれの尊厳のすべては考えることの中にある」「よく考えることを務めよう。ここに道徳の原理がある」などの表現があるので、自己の内部の思考が自己をかけがえのない自己足らしめることなどについて、文字数が短いので簡潔に説明する。2問目が難しいが文字数規定はない点と時間配分に留意する。3問目は昨年の「ゾウを知らない人へのゾウの説明」よりも易しいので、2問目の考察と論理的な説明の時間を確保したい。
’18の外山滋比古は小論文や現代文で頻出。’19にも他大学で出題された。特にグライダー人間の下りは、他大学医学部でも既出。設問をよく理解し、問2は大学での学習について述べる。3問目のイラストは、向き合うAさんとBさんの間には大きな丸いアナログ時計があり、針は7時1分位になっている。向かって左側のAさんは右手に四角い鞄を下げている。右側のBさんの右手は時計を指している。演習では、午前7時と午後7時に解釈が分かれた。吹き出しのセリフにはシンプルにして状況をきちんと文章化する。’18、’16の愛知医大でも練習できる。4問目も、立場の違う人、知識のない人わかりやすく説明する力が求められる。慶応大でも同様の出題があり、医療におけるインフォームド・コンセントにも通じる。’17はストレス・パラドクスについて。ストレスの多い人の方が人生の満足度が高いこと、ストレスと生きがいの関連性について述べられた文章を踏まえて「ストレスと幸福」について考える。新傾向を知るために2年分は解いておいた方がよい。

福岡大学

●資料文の理解と簡潔にまとめる力が求められる
●資料文型

●傾向
資料文型が続いている。文字数については、従来の600字程度という指示から’19は600字以内に変化したが、’20はまた「程度」に戻っているので、プラスマイナス1割くらいが目安。’20は資料が複数型だったので、類似点と違いを整理する。昨年は高齢ドライバーが引き起こす死亡事故が目立ち、メディアでも大きく取り上げられ、有名人の免許返納アピールが続いた。認知機能と身体能力の低下が要因とされるが、車は日常生活に必須の地域もあり、自治体の代替策が必要である。’19は耳慣れない語句が出てくるが、きちんと読解して、設問に答える。’18の岩田健太郎は感染症雑誌「J-IDEO」を刊行している。ダイアモンドプリンセスから船内のコロナ対策の不備をYouTubeで配信した人。最近小論文に登場するようになった。この雑誌では保健所長のコーナーもあり、18年7月号は女子医で出題されたHPVワクチンがテーマの号もある。福岡大では科学や医療の話が続いているが、’19からは、社会を考える視点も必要である。’18は資料文も設問も「まともな医者について」というもので、かつて産業医大で医師の行動の問題点が問われた。資料文をよく読むと、患者の立場に立てると安易に思うな、患者の立場に立つのは非常に難しいが、それでも理解に努めようとすることが大事だと言っている。’19の川崎医大は医師のコミュニケーションの問題の有無を問うているので、ついでに読んでおきたい。医療以外の課題対策には、岩手医大、日大、東海大などを使って練習をする。